015 次の段階へ。
「ゲホッゲホ……あぁクソ」
吐き気を催すような最悪な気分と共に、次に目を開ければ全く知らない景色が広がっていた。
どこだここ?
それが素直な感想。
だが───その答えはすぐに得ることができた。
「やぁ、久しぶりだね」
もはや反射だった。
その薄気味悪い声を聞いた瞬間、俺は今出せる全ての力をもって地を蹴る。
しかし───
あぁ……癪に障る。
気に食わない。
俺は握った拳をソイツの手前で止めた。
凄まじい風圧により、後方にあった崩れかけのビルが完全に倒壊した。
「なんでよけねぇんだ……? クソ野郎」
「君なら分かるだろう?」
「……しばらく見ねぇうちに随分イカしたツラになったじゃねぇか」
オールフォーワン、なんて呼ばれているコイツの事が俺は心底嫌いだ。
マジで殺してやりたいくらいには。
俺が殺すつもりで拳を振るっても、コイツは止めることが分かっていたように避ける素振りさえ見せなかった。
いや、実際にわかっていたんだろう。
そのために……さっさと転移させりゃあいいものをあえて俺をオールマイトと戦わせた。
奴の脅威を俺に理解させるために。
ここで俺がコイツと争えば、確実にオールマイトを対処できなくなると理解させるために。
この、全てを支配してると言わんばかりのニヤケ面。
気色悪いったらありゃしねぇ……クタバレ。
「オールマイトは強かったかい?」
ほらな。
得意顔でこんなことを聞いてくる。
気持ち悪いったらねぇわ。
「あぁ……強かったよ。あれで本当に衰えてんのか?」
「フフ、衰えているよ。まだここに来ていないのがいい証拠さ」
まだここに来てねぇのがいい証拠だと?
10秒も経ってねぇだろ。
俺は少し辺りを見渡す。
この場所がだいたいどの辺か分かる。
バーから数キロは離れている。
いや……あのイカれたパワーがあればいけるんかもな。
驚きはない。
「げぇぇ……」
すると、少し遅れて死柄木弔たちが黒い水と共に現れた。
十中八九このクソ野郎の個性だろう。
俺の知らない個性だ。
また増やしたか。
「また、失敗したね弔」
突然、コイツは語りかけた。
親が子にかけるような優しく柔らかい声だ。
「でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい」
……なるほどなァ。
いまいち見えなかった死柄木弔とコイツの関係。
死柄木弔がこのクソ野郎を見る目。
まるで───『ヒーロー』でも見ているようじゃねぇか。
あぁほんと……相変わらずだなクソが。
胸糞悪ぃ。
「いくらでもやり直せる。そのために僕がいるんだよ」
そこで、『オールフォーワン』は俺の方に首を向け、口元だけを歪めて笑った。
「それに血影もいる、より安心だ。だから大丈夫だよ、弔。───全ては君の為にある」
目をキラキラと輝かせやがって……。
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