〈1〉
オーラ・マシンの生産を請け負ったのも、下請けを引き受けたのも力を蓄える為だ。
「姫様」
騎士団長のギタムが割り込んで来た。クの国正式の甲冑姿をした初老の男である。
「何か?」
「《ビスコンティ》より通信が入りました。姫様は至急、御館(おやかた)にお戻り下さい」
はエッダ家の城館を指した別名である。この秘密工場からは数リル離れている。見る間に妹のオーラ・バトラーが着地をし、コクピットから飛び出したドリンが慌てて《グラム》の機内へ駆け込むのが見えた。
「呼ばれているのは私だけではない様ですね」
リリィの脳裏に『何かあったな』と勘が告げる。
「ガモン殿と拙者も含めてです。ドリン様にも招集が掛かっております」
「ドリンも《レプラカーン》で行かない分別はあるみたいですね」
飛び立つ《グラム》を確認しながら指示を出す。秘密裏に購入した《レプラカーン》で館に乗り着ける愚は犯せない。それが人里離れた僻地の工場がある意味だ。馬車では間に合わないと察して、随伴させていたオーラ・ボム《ドロ》を急遽用意させる。
武装も取り外した作業用だが、連絡艇として使うのだから支障はあるまい。これならば数分で《ビスコンティ》へ辿り着けるだろう。
「出しなさい」
作業班を残したまま、呼吸音を残してオーラ・ボムは空中へ舞った。
〈続く〉
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