ハーメルン
キグル・ミッミ ~着ぐるみの聖戦士伝説~
〈2〉


 《ビスコンティ》はエッダ家の城館である。いや。本当はエッダ城とか称したかったのだろう。実際、造りは戦闘用の城塞そのものなのだが。国王の手前、城では無く城館を名乗っている。
 アの国のドレイク領の城が《ラース・ワウ》と名乗っているのと同じである。城と称すると国主に対する謀反と見做されるから、敢えて城館と称しているのである。

「機械の館はいつも通りですな」

 上空から下を見た工場長の一言がこれだ。機械の館は城館の隣に建設された主力工場である。半完成品のオーラ・ボムが庭に安置されており、多数の男達が取り付いている。

「特に変わってはいないわね」
「一般の工人には招集には無関係みたいですね」

 四人乗りの《ドロ》は定員一杯である。工人の長ガモン。騎士団長のギタム。パイロットの騎士バルカンに加え、艇長隻に座るのは姫君のリリィ・エッダだ。
 本当は天井に昇って露天式に指揮を執るポジションなのだが、さすがに姫君に吹き曝しで乗れとは言えない。天蓋のハッチはしっかりと閉められていた。

「ドリン様は到着している様です」

 ギタム騎士団長が視点を移しながら呟く。
 広場の端に橙色をした《グラム》が佇んでいた。コクピットのハッチは開いていた。閉める暇も無かったのだろう。

「バルカン、急ぎなさい」
「はっ」

 速度を落とした《ドロ》が降下に移る。庭の一角に着陸したオーラ・ボムへ数人の寡人が寄って来る。機内からリリィ他が現れると兵はその場に頭を垂れる。。

「招集があったと聞いたが」

 先導していた騎士団長が兵に尋ねる。
 
「はっ、謁見の間です」
「姫様、こちらへ」

 リリィをガイドしながら先頭を進むギタン。館の玄関までエスコートすると序列が上の姫を優先させて後へと付く。団長の後には従う形でガモンが続く。

「父上、リリィが参りました」

 謁見室は正面玄関から階段を上がって奥にある。扉を押し開けると玉座に領主のマイセン・エッダが座っていた。
 もっと金持ちになれば侍従か侍女が控えていて、自らの手で開けなくとも優雅に扉の開閉をしてくれるのだろうが、生憎、エッダ領にはそんな余裕は無い。スカートの端をつまみ、一礼して頭を垂れる。いわゆるカーテシーだ。

「ご苦労」
「姉様」

 父の声と同時に玉座の隣に立っていたドリンが振り向く。謁見の間には宰相としての家老や、様々な主要な家臣が集まっていた。当然、騎士団長や工場長は姫と違って跪く。

「あはははは」

 厳粛なその場に似つかわない明るい声が響いた。ぎょっとして視線を向けると異様な人物が玉座の隣にちょこんと座り、足をばたばたと動かして笑っていた。

「この方は聖戦士だ」

 マイセンが紹介するのは、青い獣の着ぐるみを着た少女。少女だと解ったのは口の奥に顔が見えるからである。彼女は呆然とこちらを見ている皆に気が付くと、よいしょと頭の部分を外してお辞儀をする。
 日焼けしていない色白の肌。茶色の瞳に黒い短髪。年齢はドリンと同じ位なのか、若そうに見える。頭に白と黄色いターバンを巻いているのが印象的だ。

「キグル・ミッミだよ。正義の怪獣だよっ」

 自己紹介がそれだった。怪獣と言う存在は知らないが、強い獣の事を強獣と称するのだから、怪しい獣の事なのだろうか?

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析