ハーメルン
キグル・ミッミ ~着ぐるみの聖戦士伝説~
〈2〉


「せ、聖戦士ですの?」
「そうよ。あたしを助けてくれたのだから!」

 軽い飛翔音と共に現れる小さな人影。驚くリリィの顔面に現れたのは、長い髪をしたミ・フェラリオだった。小さな指を顔の前に立てて、ぶんぶん振っている。

「ミッミは命の恩人よ。怪獣とガロウ・ランを退けたのだから!」

 ふくれっ面で説明するのは、ピンク色のレオタードにも似たフェラリオ・ルックを纏った小妖精だ。バイストン・ウェルと呼ばれるこの世界で一般的に見られる存在である。

「えーと……貴方は?」
「シルよ。シルフィール・メララ。シルで良いわ」

 赤毛のフェラリオは縦ロールの髪の毛を揺らしながら名乗る。ミッミの方はと見ると楽しそうにマイセンと会話をしていた。「うん、ミッミもそう思うよ」や「やはり聖戦士殿もそう思うか」とか、会話は弾んでいる様子だ。

「かいつまんで報告致しますが」

 家老のローウェル。先代からエッダ家に仕えていた重臣が、老体にも関わらずいと身を乗り出した。姫達は「じい」と呼んでいるが。時には現当主も一目置かざる得ない老騎士だ。

「ドクマの村がガロウ・ランの襲撃を受けたのです。強獣を含む数十人規模の軍団でした」
「何ですと」

 騎士団長のギタムが反応する。ドクマは辺境ながら強獣を麻痺させる毒液、《シガラ》を生産んしている重要な策源地である。一大事だ。直ちに兵をドクマへと送らねばならない。

「慌てなくとも結構。それらはこのミッミ殿が片付けました」

 慌てる騎士団長を尻目に淡々と語る家老。その報告を聞いて、新たに入室した第一王女達は固まった。ドクマの村を襲った大軍勢が、目の前の着ぐるみ娘に撃退されたと言うのか。
 強獣として標準的な《ガッター》だとしても、人間が単独で立ち向かうのは不可能だ。集団で取り囲んで弩弓をぶち込むか、毒槍で突き殺すかが普通の対処法だろう。

「きょ、強獣の種類は」

 おっさん顔の騎士団長が叫ぶ。

「《ドラウゲン》含む三騎との事ですな。バリ・バリーンが率いていた支族です」
「空を飛ぶ強獣ではありませんか」

 強獣《ドラウゲン》の名を聞いて驚愕の声が上がる。広げた翼でかなりの速度で飛翔し、しかも嘴から炎の弾を吐く奴だ。騎士団にも導入されて騎獣に訓練された個体も多い。
 もっとも肉食なので食べられる飼料が確保出来るか否かが、竜騎士団の維持に関わって来る為、クの国でも竜騎士を保有している者は少ない。エッダ家でも正規の竜騎士はごく少数だった。

「ミッミ殿。《ドラウゲン》を倒したのは本当なのか」
「ん?」

 領主と会話中に不作法なのだが、ギタムは思わず質問を浴びせていた。ミッミは首を傾げると元気よく「うん」と頷いた。

「あのバリ・バリーンの襲撃を……」
「バリ・バリーンって、怪獣の背に乗ってた人? 
 口が悪くて生意気だったから、尻尾で叩き潰しちゃったよ」

 ミッミガ事も無げに言う。ガロウ・ランとは地の底世界、ホッブレッズから流れてくると伝えられている亜人で、蛮族みたいな風俗をした連中だ。
 クの国でも多数が跳梁跋扈し、強盗・殺人などの悪事を働いている。辺境の村では部族規模の集団が襲撃を掛ける事も多い。バリ・バリーンはその中でも悪名高い頭目だった。

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