一本橋
夢を見る。
その風景は、まちまちである。
ある時は日本家屋。
ある時は屋根裏部屋。
しかし共通点があって、それはどこか懐かしさを感じるところだ。
まるで時代を超えたかのような錯覚。
夢なのにどこか夢でないような感覚
その日見た夢は、薄暗い部屋だった。
俺は、とても仲のいい友人3人といた。
もうその絆は強固で、4人は絶対に死ぬまで友人だと思えるほどだった。
顔も分からないのに。
俺たちはとても焦っていた。
何かにおわれているのだ。
先へ、行かなくては。
そんな気持ちが追いかけてくる。
きっと、追いかけてきたのはそんな気持ちだったような気がしないでもない。
そうして、薄暗い部屋へたどり着いた。
階段を降りてきた所までは覚えている。
その先からがこの夢なのだ。
部屋…なのに崖。
10×5m位の、縦に長い長方形の部屋だった。
何より異質なのは、その真ん中。
向こうへは行かせまいとする、崖があるのだ。
崖の距離は恐らく5mはある。
飛び越えるのは無理だし、何せその崖は底が見えないのだ。
続く闇。
果てはないような気がした。
だが、その真ん中に渡れと言わんばかりの橋がある。
その太さは、15cmほどしかなく、まるで体育器具の平均台だった。
ここで死ぬ訳には行かない。
そう強く思う俺たちは、その橋を恐る恐る渡ろうとする。
まず一番最初に渡ったのは、俺たち4人のなかでリーダー的な存在。
いつも仲裁をしてくれる、頼れる兄貴肌のやつだった。
そいつは、フラフラしながらも何とか半分を超えた。
そこで、俺も行かなくてはと思い、足を進める。
怖かった。
とにかく怖かった。
それでも、落ちたら死ぬという緊張に心が張り裂けることは無かった。
半分を超えて、これは行けるなと安心した時。
後ろから2人が少しずつ進んできていた。
よし、このままみんなで先に行ける。
そう確信した時には、もう1mを切っていた。
どことなく余裕がもてたのか、俺は振り返った。
「これ、行けるぞ!頑張れ!」
そう言ったのもつかの間。
1人づつ来るものだと思っていたが、2人がピッタリくっついて渡りに来ているところに違和感を覚えた。
はて、なぜそんなに詰めてくるのやら?
そして、俺は今も覚えている。
おそらくこの夢を見たのはもう何年も前。
軽く5年以上は経っている。
それでも、忘れもしない。
1番後ろのやつが、その前のやつの両肩に手を置いたのだ。
そして、何をするのかと思うと。
一緒に落ちていったのだ。
「ぅああああぁぁぁぁっ!」
その断末魔を忘れもしない。
だが、もっと忘れられないのは、目だ。
自分特有の、影が指して顔が分からない夢なのに。
目だけがハッキリとこちらを向いているのがわかるのだ。
それは、断末魔を上げているやつもだ。
2人は、こちらをずっと見ながら、俺と目を合わせながら無表情に落ちてゆくのだ。
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