ハーメルン
ラストスタリオン
あはははははは!!

 城内で迷子になりながら、鳳が謎空間をさまよい歩いていると、やがて大きな木に建てられたツリーハウスの前に出た。そこから出てきたエミリアに似た少女は、鳳の幼馴染とは関係がない、メアリーという名前の少女だった。

「つーか、メアリー・スーだって?」

 彼は胡散臭いものでも見るような目つきで少女のことを見た。メアリー・スーとは、スター・トレックの二次創作に登場するキャラクターのことで、その異常なまでにハイスペックな能力で原作の主人公達を助け、彼らに超絶感謝されるという、アイタタタな展開をやらかし、原作ファンを激怒させたという曰く付きの少女の名前である。

 そのチート能力やご都合主義な物語の展開が、いかにも中二病患者にありがちなパターンを踏襲していたため、日本の二次創作界隈でも駄目な二次創作キャラの典型として忌み嫌われている。要するに俺tueeのパイオニアみたいなキャラクターであるが……

 そんな名前の少女が、幼馴染と同じ顔をして、目の前に現れたのである。しかもエルフ耳で。こんな偶然があってたまるか? 鳳は呆れるような口調で、

「それ……ホントに本名か? もしかして、俺のこと騙してない?」
「むきー! なんでさ! 騙してなんかいないわよっ!」
「いや、だって変じゃん……おまえのその名前」
「はあ!? オオトモの方が変なのに! 変なやつに変って言われたくないわ!」
「オオトモじゃなくて、オオトリな……あと、ツクモでいいよ、そっちの方が名前だから」
「ツクモ! 変な名前変な名前変な名前変な名前変な名前!!」

 鳳が間違いを訂正すると、よほど悔しかったのかメアリーは変な名前を連呼した。まるでガキみたいな反応に辟易したが、考えても見れば、いくらエミリアに似ているからと言っても、彼女は見た目通りのガキなのだ。鳳は大人気なかったと反省する。

「分かった、分かった! 悪かったよ。おまえの名前は変じゃないよ……その、知り合い? に、同じ名前のがいるんだよ。だからもしかして、おまえがそれを知ってて、俺のことをからかってるんじゃないかって思ったんだ」

 すると彼女の瞳がパーッと輝いて、

「ツクモの友達!? 同じ名前なの!? あはははははは!!」

 突然笑い出すメアリーに面食らい、鳳がぽかんとした表情で問い返す。

「……何がおかしいんだ?」
「何もおかしくないよ! 同じ名前の人がいるなんて、凄いびっくりだわ! あはははははは!! おんなじ名前! おんなじ! あははははははは!!」

 最初はその反応がさっぱり分からなかったが、しばらく見ているうちに、どうやら彼女は自分と同じ名前の人がいることが、単純に嬉しいのだと分かってきた。感情表現とかテンションがおかしいのは見た目通り、彼女がガキだからであろうか。

 見た目はドキッとするくらいエミリアそっくりなのだが、中身はまったくの別人のようだ。一体、この子はなんなんだろうか……

 鳳は彼女が落ち着くのを待ってから、彼女が一体何者なのか、エミリアとは関係がないのか、慎重に質問してみた。

「ところでメアリー。おまえ、ここで何してるんだ? ここはおまえの家なのか?」
「そうだよ? 見て分かるでしょ」
「いや、わからないが。そうか……ここで暮らしてるのか。一応聞くけど、いつからだ? 最近、異世界から飛ばされてきたとか、そんな体験があったりしないか?」

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