ハーメルン
ラストスタリオン
うひょー! 拙者、待ちきれないでやんす

「君たちにはこの世界の女をジャンジャン抱いて、バリバリ子供を作って欲しい!」

 アイザックのそのド直球な要求に、さしもの鳳たちもその意味を消化するのに暫くの時間がかかった。ようやく事情が飲み込めると、今度はその内容の美味しさに、男たちは自分達の鼻の下が際限なく伸びていくのを止めることが出来なくなった。

「え? 子供作れって……セックスっすか?」「え……? マジ? うそ? マジで?」「拙者たち、そんな理由で呼び出されたでやんすか?」「リロイ・ジェンキンス」

 何しろ、あっちの世界でも四六時中ゲームばっかりしていたような連中である。女っ気など、生まれてこの方ろくにあったためしがない。そんなDTメンバーに、目の前に鎮座するハリウッド女優もかくやと言わんばかりの神人(エルフ)と子作りをしろと言うのだから、これを喜ばずして何を喜ぼうか。

「話は分かったけど、私はごめんだわ。そんな動物園のサルみたいな扱い……」

 ただ一人だけ難色を示すジャンヌを除いて、男たちは身を乗り出すようにして、その鼻息荒い顔面をくっ付くくらいアイザックに近づけた。目は血走り、鼻の穴はヒクヒクと痙攣している。

 アイザックはその勢いに若干引きながら、

「もちろん、嫌だというならば無理強いはしないが……出来れば協力して欲しいのだ。もしそうしてくれるならば、君たちの生活の全てはこちらが保証しよう。悪い話ではないと思う」

 もちろん悪い話ではないが、その物言いからちょっと気になることが頭を過ぎった。ほんの少しばかり冷静になった鳳が、アイザックに尋ねる。

「ところで……生活の保証をしてくれるのはありがたいんですが、俺達はその……帰れるんですかね?」

 すると、アイザックの部下たちが、それだけは聞かれたくなかったといった感じで、険しい顔つきを見せた。その表情を見ているだけで答えは分かる。案の定、アイザックが申しわけなさそうに、

「うーむ……実は、呼びだす方法は分かっていても、還す方法はわからないのだ。300年前に呼び出された勇者様も、結果的にこの世界に残って命を落としたのだから、いまだかつて元の世界に戻ったものは居ないだろう」

 なんとなく予想はしていたが、やはりそうか……しかし、落胆する鳳やジャンヌとは対象的に、残りの三人は気楽な感じで、

「まあ、異世界召喚にはよくある話だよな。俺は全然構わないぜ」「拙者も、元の世界に未練はないでやんす」「リロイ・ジェンキンス」

 彼らはもうこっちの世界で生きていくつもりになっているらしい。流石にそこまで割り切れない鳳は、驚いてその決意のほどを確かめるが、

「おいおい、おまえら、本当にそれでいいのか?!」
「って言われても別になあ……おまえこそ、どうしても戻りたいってほど、あっちの世界が気に入ってたのかよ?」「その割には、ずーっとゲームにログインしてたでやんすね」「リロイ・ジェンキンス」

 逆にそう言われてしまうと、鳳だってソフィアのことを除けば何もなかった。そりゃ両親はそこそこ心配するだろうが、ゲームばっかりしていたせいか、良好な関係でもなかったので、個人的にはこっちの世界に留まりたいくらいだった。やはり、彼も所詮はゲーマーなのだ。

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