誕生…だと…!?
一心さんと真咲ちゃんが結婚してから一年後。
ついに、この時がやってきた。
「は~~い、一護きゅ~ん! パパでちゅよ~~~!!」
「ぺっ」
「なんかすんげぇ俺に対して愛想悪いんですけど、この子……」
「あらあら。ほら、ママですよ~」
「きゃっきゃ!」
「あんまりだぁ~~!?」
俺の目の前で、黒崎一家が和気藹々としている。
なんとかここまで来れたよ、パッパ。俺のパパ、今何してるか知らんけど。
ついでにお兄様も何してるか分からん。
現世に定住してから四年。
恐ろしいまでに音沙汰のないお兄様に戦々恐々としているが、
「ほら、那由他さんも抱いてあげて」
真咲さんから笑顔で渡されたリトル一護を抱きかかえる。
緊張でいつも以上に俺の顔面が強張っているのが分かった。
「……」
「……」
「……」
「……」
反応が、ない!
いや、俺が無表情でジーッと見つめているからかもしれん。
ここは柔和な笑顔……出来ないわ。
少し話しかけてみるか。
「一護くん。藍染那由他です」
「あぅー」
「貴方を初めに取り上げたのは私です」
「あぁー」
「この世界で、貴方が初めて触れたのが私という事です」
「おぉー」
「貴方の二人目のお母さんみたいなものです」
「いや、ちょっとそれは違うと思いますよ、ボク!?」
ちっ、良いところで一心さんに止められた。
しかし、苺はパパの事なんか気にも留めず俺の胸元をペチペチと叩いている。
ポヨンポヨンと跳ね返るのが面白いのだろうか。
好きなだけ遊ぶと良いさ。むしろ俺を弄んで欲しい。
俺は君の一喜一憂する姿に全生命力をかける所存なのだから。
今は“喜”の時間だ。
“憂”はあと……9年後くらい?
で一回あって、その6年後にはビッグウェーブが俺を待っている。
数年間の雌伏を経るのだ。
でも、割と今も至福。
「ふふっ。どうやら一護は那由他さんの事が好きになったみたいですね」
真咲さんの言葉に俺の心が綻ぶ。
ああ^~。苺がくっそ可愛いんじゃぁ~~……。
こんな可愛い子を曇らせようとか思ってるのか、俺は?
でも見たいんだよな~。
これはアンビバレンツですわ。
この子を甘やかしてすくすくと元気に育てたい。
俺の事を「お母さん!」とか呼んで欲しい。
別にパパの方はいらないが。
シングルマザーでいんじゃね?
苺とかめっちゃ尽くしてくれそう。ニヤけるわ。
「お、俺にも抱かせて下さいよ~」
なんて俺の桃源郷的妄想も一心さんによって粉砕された。
こんの野郎。
しかし、一心さんの家族に向ける愛の深さも理解しているつもりだ。
これは原作云々でなく、この四年間を側で見てきた俺の感想である。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/8
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク