第008話:漢、アルベール・カモミール参上
今、千雨は女子寮の大浴場に来ていた。ちなみに裸ではなく、水着を着用している。しかも何故か、風呂なのに伊達眼鏡も一応身に着けていた。なんでそんな事になったのかと言うと、浴場に掲げられた横断幕に書かれた文字が、それを説明していた。曰く、『ネギ先生を元気づける会』と。
(……いや、確かに昨晩ネギ先生はマクダウェルに惨敗したらしく、今日は落ち込んでたけどよ。挙動不審だったし。ヤバい事もうっかり口にしてたし。元気づけるのが悪いたあ、言わねえよ。
でもなんでそれが、3-A女生徒総出でネギ先生を風呂場に拉致する事に繋がるんだよ)
千雨の視線の先では、裸に剥かれたネギが3-Aの女生徒たちによって弄られたり触られたり、逆セクハラの限りを尽くされていた。中にはクラスのいいんちょである雪広あやかの様に、自分がネギのパートナーになりたいとネギに迫る者もいる。
(魔法使いのパートナーが何なのかも知らんくせに……。と言うか、そう言う意味で『パートナー』を捉えてないんだろうけどよ。いや、わたしもちょっと学園長や高畑から聞かされただけなんだが)
魔法使いのパートナーとは、呪文詠唱中の魔法使いを護るための護衛であり、剣であり盾である存在だ。普通は呪文詠唱中の魔法使いは無防備になり、その間に攻撃を受けると呪文を完成させる事ができない。それ故、魔法使いを護るためのパートナーが必要なのである。
もっとも魔法使いたちの世界、『魔法世界』での大戦も終わり、近年ではそのパートナー『魔法使いの従者』は、恋人探しの口実に使われている事も珍しくない。そう言う意味合いからすれば、いいんちょ等がネギに『自分をパートナーに』と売り込むのも、間違いでは無いのだろうが。
何にせよ千雨は、騒ぎの中心から外れた場所で一歩退いて、3-A有志によるネギへの逆セクハラ大会を眺めていた。遠い目で。
(……ん? なんかセンサーに妙な反応が……)
「キャーッ! ネズミーッ!!」
「イタチだよ!」
「ネズミが出たー!」
「キャーこのネズミ水着を脱がすよー!」
「いやーん!」
「エロネズミー!」
突然大浴場は阿鼻叫喚に陥った。何かしらの小動物が大浴場に紛れ込み、3-A女生徒たちの水着を脱がしまくっているのだ。千雨はその小動物に全身の感覚を集中する。そう、体内に仕込まれているセンサー系まで含めた感覚を集中したのだ。
千雨がセンサー併用で『視た』限りでは、少女たちの水着を脱がしている小動物はネズミには見えなかった。と言うか、千雨はその小動物に何とはなしに無意識で反感を抱く。……その小動物がオコジョだったためだ。
オコジョは別名くだぎつね、ヤマイタチ、エゾイタチなどとも言い、ネコ目イタチ科の動物だ。そう、イタチ科なのである。そして以前千雨を殺しかけて、彼女がトランスフォーマーに生まれ変わる原因となった妖怪は、鼬妖怪であった。
千雨はツカツカと騒ぎの中心へ歩み入る。その両眼は、ちょこまかと動き回るオコジョを確と捉えて逃がさない。オコジョは能天気にも、千雨の水着も脱がそうと言うのか、飛び掛かって来た。千雨は自身のボディの、格闘戦の戦闘プログラムを起動。手刀が一閃する。
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