第014話:シネマ村の戦い
3-A修学旅行における班分けの3班に、千雨は含まれている。そしてその3班には、朝倉和美も含まれていたりした。そんなわけで、この班の修学旅行三日目自由行動日は、さぞかしギスギスした雰囲気になるかと思いきや……実はそうでも無かったのである。
千雨は見た目普通に行動していたし、和美もまたいつも通り明るく振る舞っている様に見せていた。少なくとも、班の雰囲気が悪くならない程度には。ただし、見るべき者が見れば、千雨も和美も互いの接触を可能な限り避けている事は見て取れる。
そんなわけで、班長である雪広あやかいいんちょはネギと共に行動できない事を嘆いているのでとりあえず置いといて、動いたのは那波千鶴である。彼女は班メンバーの村上夏美に頼んで他の面々を引き離してもらい、千雨に話しかけて来た。
「ねえ千雨ちゃん。和美ちゃんと何かあったの?」
「あったよ?」
「……あらあら、まあ」
千鶴は真正直に答えられるとは思わなかった模様で、手を頬にあてて驚きの声を上げる。驚いている様には見えないが。
「何があったかは、聞いていいかしら?」
「駄目だ。わたしと奴だけじゃない、第三者が深く関係した事だし。そっちのプライバシーとかも大きく関わって来るからな」
「あら、そう……。それは難しいわねえ」
うーん、と小首を傾げて悩む千鶴だったが、意を決して問いかけた。
「仲直りはできない? 千雨ちゃん、そんなに怒ってるの?」
「怒ってる……って言うのとは違うな。いや、朝倉と話すまでは怒ってたと思う。物凄く、物凄く。ただ、奴と話してからは怒るんじゃなく、なんて言うのかな……。あまりの言い草に、そこを通り抜けちまった」
「……もしかしたら、見限った?」
「ああ、それだ。なんて言うのかね。もう腹も立たないし、かと言って仲直りしようとか言う気持ちにもならない……違うな、『なれない』んだ。関わり合いになりたくない」
千鶴は滅多に見せない悲し気な顔で、呟く様に言う。
「……それは、物凄く悲しい、寂しい事よ?」
「わかってるつもりだけどさ。そこまで行き着いちまったのは、わたしのせいなのかな? それはわたしが言われないとならない事なのかな? たぶん違うと思うが」
「そう、ね……」
小さく千鶴は頷く。それは悲しそうに。それを見た千雨は申し訳なく思うが、しかし自分の情動はそう制御できるものではない。そうこうしているうちに、他の面々が戻って来た。
そして千雨たち3班は、京都の観光スポットであるシネマ村へと向かう。道中で千雨は、自身の電子頭脳に転送されてくるドロイド群からの情報を、物思いに沈んでいるフリをして整理していた。
(ネギ先生に付けてた小鳥型ドロイドからは、なんとかネギ先生が敵の狼男っぽいガキを退けて勝利したって情報が送られて来たか。けど、こっそり後を付いて来てた宮崎と綾瀬に、魔法がバレちまった……。どうしたもんだろうな。どうしようも無いな。
しかし、もう一方の近衛と桜咲に付けてた野ネズミ型ドロイドは、桜咲の高機動力で振り切られちまった。何かしら、暗器を使って来る隠密状態の敵と交戦してたみたいだが。シネマ村へ向かってたみたいなのが、不幸中の幸いか)
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