第006話:学園側と話し合おう
ここは深夜の麻帆良学園女子中等部学園長室。麻帆良学園学園長にして関東魔法協会理事の近衛近右衛門と、魔法先生タカミチ・T・高畑は、忸怩たる思いを抱いていた。
つい1週間ほど前、妖怪退治の現場に一般女子生徒が紛れ込み、妖怪に攻撃され重傷を負った挙句、突如出現した巨大ロボに連れ去られたのだ。その生徒の名は、長谷川千雨である。
「……やはり彼女には、効いておらなんだのじゃろうのう」
「認識阻害や意識誘導を退けるレジスト体質……ですか。しかし人払いの結界までもレジストしてしまうとは……。
無事で……。いえ、報告された状況では、無事は無理でしょうね……。せめて生きていて欲しいですが……」
「うむ……。
そして長谷川君を連れ去った、巨大ロボット……。いったい何処の誰が造り、何処のどんな組織が用いているのかすら不明じゃ。そんなロボットが、彼女を連れ去った……。いったい如何なる目的で……」
その時、机上の電話が鳴り響く。電話機の表示は、外線からの着信である事を示している。近右衛門は受話器を取った。
「はい、ワシじゃ。学園長じゃ」
『麻帆良学園学園長にして、関東魔法協会理事、近衛近右衛門殿かね?』
「!?」
近右衛門は目を見開き、素早く電話機の外部音声出力をオンにした。その様子を見て高畑も眉を顰め、電話機のスピーカーから流れ出る音声に聞き入る。
「うむ、ワシが近衛近右衛門じゃ」
『俺は水谷壊斗と言う。1週間前の事件に出現した、巨大ロボットの関係者だ』
「何じゃと!?」
思わす近右衛門は声を荒げる。だが即座に自分を取り戻して、気を落ち着けた。
「い、いや済まんの。続けてくれたまえ」
『今からあの事件の被害者、長谷川千雨を連れて、そちらと面会をしたい。色々と事情を話したいのでな』
「!? ……長谷川君は、無事なのかの?こちらで知る限りでは、かなりの重傷を負ったと報告を受けておるのじゃが」
『無事じゃ無かったが、どうにかなった。いや……どうにかした。
その件も含め、出来る限り内密に話がしたい。色々とな。もしそちらが良ければ、今から伺いたいが?』
「今から、かの?」
近右衛門と高畑は、素早くアイコンタクト。互いに頷き合う。
「……よかろう。何処で会うとしようかの?」
『我々が学園長室まで出向こう』
「だが部外者が学園長室まで来るのは難しかろう。そうじゃの……。迎えを出すとしようかの」
『いや、それには及ばん。今からそちらへ行く』
次の瞬間、学園長室の中心に光が生まれた。
高畑が近右衛門をかばう位置に瞬時に移動し、近右衛門も身構える。光は2体の人間型を取り、次の瞬間2人の人間として実体化した。
現れたその人物は、当然と言っては何だが、壊斗と千雨である。
「夜分遅く失礼する、近衛学園長。そちらは高畑先生、で良かったかな?俺が水谷壊斗だ。よろしく」
「……今晩は、学園長先生、高畑先生」
「長谷川君! 無事だったのか!」
現れた千雨に、高畑は驚きつつも喜びの声を上げる。しかし千雨は少々複雑そうな曖昧な笑みで、それに応えた。
「いえ……。無事じゃありませんでしたけど、壊斗のおかげで命拾いしました。
大怪我して欠損した身体も、壊斗に造り直してもらいましたし……」
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