ハーメルン
《竜》の満ちる世界
02―未知なる脅威

 城塞都市、エ・ランテル。

「戦士長!」
「蒼薔薇の方々も、よくぞ生きて!」

 門へと接近するや否や、兵団が総出で出迎える。
 森に近い村々からの避難を行っていた、エ・ランテルの兵団と王国戦士団の二つだ。

「随分と慕われているのですな、皆様は」
「モモンガ殿には劣りますよ」

 はははと笑い合い、しかし直ぐに、ガゼフは意識を切り替える。

「皆、ありがとう。だが、私たちが生きているのは、この御方々のお陰だ」

 と、ガゼフは堂々とした振る舞いで、モモンガたちを部下たちに紹介。
 口々に感謝の言葉を述べる彼らにデミウルゴスたちが気を良くする中、モモンガは背後の者たちへと振り返る。ガガーランと、蘇生兼回復役として残っていた神官戦士、ラキュースが左右に退けば、大仰な台車とそれを引くアンデッドに運ばれるクシャルダオラの姿が。

「な!?こ、古龍を!?」
「ああ。凄まじい方々だよ、本当に」
「しかも、特異個体の剛種ときた。私たちだけなら、全滅は避けられなかっただろうな」

 イビルアイの言葉に、王国戦士団の顔色が青くなる。

「も、モモンガ殿………本当に、本当にありがとうございます!」
「貴殿が居なければどうなっていたか………想像もしたくありません」

 打算ありきなので大丈夫です、と馬鹿正直に口にできる程、モモンガも無神経ではない。だが、同時に心からの感謝に対し、そんな自身への恥じらいや罪悪感を抱かない程厚顔無恥でもなく、一言一言がその心に突き刺さっていく。

「そ、それよりもだな!今回の件、早急に報告するべき事態なのだろう?」

 強引に話題を変えにかかれば、イビルアイの纏う空気が一変。

「そうだ。特異個体というだけでも問題なのに、その上剛種ときた」
「それほどまでに、希少なのか?」
「希少というのもそうだが、危険なんだ。特に剛種は、見た目で判別がつかないから、尚更」

 違いが判らない彼らでも、あのクシャルダオラの強さは理解できた。

「成程………強弱の区別が難しい、というのは問題だな」
「ああ。何より、古龍自体強力なせいで、尚更に難しいんだ………歴戦王は、また別なんだがな」

 不穏な単語にモモンガが凍り付き、ラキュースたちが呆れる。

「それは大陸南東の話でしょう?」
「だが、滅尽龍は古龍を喰らう古龍だ。行動圏も広い以上、油断は出来ん」

 猛烈に嫌な予感を覚え、モモンガはその話題を無視して話を続ける。

「王都まで、案内できる者は居るか?居るのなら、私が先行して転移魔法でこちらと繋ぐが」
「そんなことが出来るのですか!?」

 ガゼフたちが驚く中、沈黙を保っていたデミウルゴスが大きく頷く。

「当然です。至高なる御方ならば、その程度造作もない」
「よせ、デミウルゴス………それで、出来る者は?」
「私が転移魔法で送ろう。それが一番確実だ」

 と、イビルアイが名乗りを上げれば、モモンガも同意。共に転移してから、数秒程してから漆黒の靄が生じ、そこからイビルアイが飛び出してくる。

「これは凄いな………と、ついて来てくれ!」

 その指示に従い、王国戦士団はエ・ランテルの者たちに礼を述べてから、過半数がデミウルゴスたちと共に続く。そこにあるのは、荘厳ながらも、それ以上に確かな実用性を併せ持つ見事な宮殿であり、分厚い城門、城壁を含む諸々を駆使すれば、空からの敵襲以外であれば大きく抑えることが出来るだろう。

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