ハーメルン
《竜》の満ちる世界
06―決戦前夜

 イャンガルルガ、討伐―――

 その報せが届いたのは、シェンガオレンが迎撃地点に現れると予想された日の、丁度前日。

「マジかよ!あのガルルガを倒したってのか!?」
「この土壇場でンな三流ジョークかませる訳ねぇし、大マジだろうよ!っしゃ、明日は勝つぞ!」
「リ・エスティーゼの底力、見せてやろうぜ!」

 冒険者が、兵が盛り上がる中、パンドラの報告を受けたモモンガは一人思案する。

(あのイャンガルルガ………長いからガルルガでいいな。奴の素材の武器は基本性能は良好と)

 パンドラが確認した武器の効果を頭の中で反芻し、伝説級(レジェンド)には足りない、と結論を出す。
 問題は、それがガルルガという種の限界なのか、あの個体が弱かっただけなのか、という点。

「モモンガ様」

 と、長考していた事に気付き、顔を上げる。

「ああ、大丈夫だ。アル、ベド………よ………」

 そして、彼女が手にする大きなトレーに並ぶ、巨大な料理の数々に度肝を抜かれる。

「えと、それは?」
「こちらの料理というのを、試しに頂いてみたのですが………」

 困惑するアルベドに『まあ、その量は戸惑うよな』と思うが、実は違う。

「その、私はアンデッドだから、手伝うとかは」
「え?」
「え?」
「………え、ああ、いえ!別に、食べきることは問題ございません。ですが、食材が」

 そう、別に平らげる事は簡単なのだ。『ギャップ萌え』タブラ・スマラグディナがそう設定した彼女は大食漢であり、これだけの量もペロリといけるクチ。しかし、彼女の言う問題はそこではない。

「これらの料理、調理過程は雑の一言です」
「………まあ、ナザリックと比べれば、な」
「なのに、未知の食材ということを抜きにしても、その………とても美味しそうなのです」
「ほぅ………そこまでか」

 好奇心が沸くも、直ぐに上がった歓声に気を取られ、そして唖然となる。

「いい飲みっぷりだぜ、コキュートスの旦那!」
「セバス殿も、見事な食べっぷり!私たちも敗けてはいられませんな!」

 アルベドに盛られた量を、殆どの者がガツガツと平らげている。質量保存の法則どこ行った、と突っ込みたくなる光景であるが、驚くべきことにセバス、コキュートスも混ざり、彼らと同様の、悪く言えば品が無い食べ方で、その莫大な量を平らげているのだ。それも、まともな食事の経験がないモモンガですら、間違いなく『美味い』と確信できる程真剣に。

「………」
「どうやら、あの食べ方がこちらの流儀のようでして」
「冒険者であれ兵士であれ、戦う者は皆ああだ」

 と、いじけ気味に現れたのは、イビルアイだ。

「イビルアイか」
「見てみろ。令嬢のラキュースですらあの喰い方だし、ガガーランに至っては三倍喰ってるぞ」

 目を向ければ、イビルアイの言う通り。百年の恋も、という感想は不思議と湧かないが、それはそれとして、ギャップが凄まじい。何より、あの量を平らげる事が出来る、というのが、ロクな食べ物が無いリアルを生きたモモンガには羨ましくもあるし、少々恐ろしくもある。

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