04―空の襲撃者
リ・ボウロロール―――ボウロロープ侯の意向のもと、リ・ブルムラシュールとの密接な交易と共に発展させた武具の生産が盛んな大都市。豊かな土地と、それに比例する脅威へと対抗するべく育成された精鋭たちは、しかし驕る事無く、全国から集められた者たちと共に忙しなくあちこちを駆け回っていた。
「オヤジ!発注してたモンは?!」
「あと少しだ!お前ら、気合入れろよ!」
「まだなら急がせんな!急いで雑にされるよか、多少時間食ってもしっかり作らせてくれ!」
「おっちゃん、これで全部か?まだあるなら遠慮せず言ってくれ、まだまだ運べるぜ!」
「バーカ、体が資本の連中に余計な体力使わせられるかよ!年寄りだからって、舐めんなよ?」
領主ボウロロープ侯が、惜しまず資材を注ぎ込んだ特注武具を、バリスタを、皆が運んでいく。
「坊ちゃん、怖いか?それでいいんだよ、ヤバい時はまず逃げて、そんで生き延びろ!生きて、情報を届けるんだ。いいか、絶対自棄を起こして特攻なんざするなよ。俺たちに、無駄死に出来る余裕なんざありゃしねえんだ」
「は、はいっ!」
「おいおい、そう硬くなんなよ!お前さんが死んじまいや、お姫さんが泣いちまうぜ?」
そう笑い、外部からの参戦者の緊張を解す者も。
そして、そんな彼らが運んだ物資が集められるのは、街より離れた、地形も利用した即席の迎撃拠点だ。予め小型のモンスターを排除したその場所で、熟練の兵と冒険者による厳重な警備の元、様々な備えが進んでいた。その中には、このような事態にならねば有用性を見出されなかっただろう物から、伝来しなかったであろうモノもある。
「よし、火薬は敷き詰めたな?なら、ここは立ち入り禁止だ」
「そうそう、そこの補強だ………よし、これで緊急時の避難経路その12、完成だ」
「なんでそんなに作るかって?そりゃあ、少しでも多く生かして逃がす為に決まってんだろ」
ドワーフの『トンネルドクター』の技術を身に着けた者たちが輸送経路兼避難経路を確保、その他にも、足止め用、攻撃用、牽制用含め様々な箇所に火薬を敷き詰め、起爆用のマジックアイテムと併せて、湯水の如く使い捨てるつもりで設置していく。
「………ヤハリ、違ウナ」
「何が、ですか?」
その様子を見ていたコキュートスの呟きに、レベル差的に危険はあるが、懇願の末外部での支援活動を許可されたナーベラルが問う。その護衛も兼ねるコキュートスの続く言葉は、彼らを感じ取ったからこそのものであるが、ナーベラルを始めとする人間蔑視のNPCには受け入れがたい言葉だ。
「コノ者タチハ、カツテナザリックヘト攻メ入ッタ者タチト、大キク異ナル」
「………本気で言っているんですか?」
「アア。彼ラニハ、奴ラニ無カッタ、輝キガアル。死ヲ恐レヌ勇猛ガ、他者ヲ想ウ慈愛ガ」
ナーベラルが唸る中、コキュートスは彼らに混じり、手伝いを始める。
「コノ物資ハ、ドコヘ?」
「む、すまないな。それならば―――」
と、人間に混ざる蜥蜴人が指示した先では、闇妖精が、トードマンが、ナーガが人間と共に、人間に出来ない場所での作業を行っている。どれも、トブの大森林にて過去に起きた事態から逃げ延び、人類との共存を選択できた者たち。最早、この世界を満たす脅威は人間だけの問題ではないのだ。
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