05―学ぶ智者
襲撃者がイャンガルルガと判明してすぐ、デミウルゴスとの通信が途絶えた。
「デミウルゴス?デミウルゴスッ!クソッ!」
冷静さを欠いたモモンガは、しかし直ぐに精神的な乱れを鎮静化され、イビルアイに貰った、現地のモンスターに関する資料―――を、パンドラに翻訳させた写しを開き、黒狼鳥についての情報を調べ出そうとする。そんな中、それをいち早く察知したラナー王女は、持ち得る限りの情報を口にしていく。
「黒狼鳥は、非常に好戦的で狡猾なモンスターです。主な武器は、吐き出す炎と尻尾の毒」
「炎………ということは、炎に耐性を持つか」
「はい。加えて、非常に狡猾で知られております。アダマンタイト級冒険者でも無ければ対処が困難な程の実力に加えて、高い知能を持ち合わせているのが厄介です。恐らくですが、どちらを主に狙えば相手の行動を制限できるか、などを学習しているのでしょう。最悪、戦いの中で交戦経験の有無を見抜かれ、手札を切る機会まで考え抜かれている可能性もあります」
黒狼鳥の最大の長所は、その狂的な獰猛さを支える高い知能。アダマンタイト級でも無ければ対処困難、という評価も穿ち過ぎでも何でもなく、その知能故に単純な実力以上に高い難易度を設定せざるを得ない竜なのだ。何より、炎と毒という、シンプルに凶悪な危険物を扱う上で知能が高い、というのが、危険そのもの。
「更に、強固な外殻が非常に厄介です。そして、水属性を除く殆どの効きが非常に薄いので」
「………そんな危険なモンスターが居て、よく平気だったな、この一帯は」
モモンガが呻くと、ラナーはそっと目を逸らし
「………生き死により、戦いが好きという危険生物ですので」
「………え、なんで絶滅してないの?それ」
「私が聞きたいくらいです、全く」
素で聞き返してしまうモモンガに、ラナーは深く溜息を吐く。
狡猾、且つ好戦的でプライドも高い、というモンスターの為、成熟前に命を落とすことも多く、成熟しても繁殖前に命を落とすことも少なくない。それでも生き延びれるのは、突出したという程ではないにせよ高い戦闘力と、高い知能の賜物なのだろう。
「ですが、その活発さのお陰で消耗も激しく、その隙を狙えれば」
「た、只今戻りんした!」
ガチャリ、と音が響き振り返れば、肩で息をするシャルティア、デミウルゴスが。
「シャルティア!デミウルゴス!無事か!?」
「はい、なんとか………しかし、油断しました」
「恐らく、それだけではないと思います」
と、ラナーが断じれば、二人が怪訝そうにその顔を見つめる。
「あの竜は高い知能を持ちます。恐らく、自身を知らないと判断し、そのように対応したのかと」
「………許されざる失態ですね」
「何を………お前たちが生きて帰った、それ以上の成果があるとでも言うつもりか」
モモンガが語気強く口にすれば、二人は静かに俯き、涙と共に平伏。
「モモンガ殿の仰る通りだ。黒狼鳥が近隣に居る、と判らねば、最悪迎撃中に強襲されていた可能性もあります。内心は複雑だと思いますし、私の言葉に悪意を感じるやもしれませぬが、どうか礼を言わせて欲しい。貴方方が得た情報のお陰で、より確かな策を組み立てられるでしょう。本当に、生きて帰って来ていただき、ありがとうございます!」
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