三話
ネカフェでキーボードをカタカタさせること一時間……中々に条件の合う仕事が見つからない今日この頃。まずは場所──東京からあまり離れないことが前提だ。
数億円を儲け、かつそれを対外的に証明することが必要ならば、馬券を買うべきは『場外馬券場』ではなく競馬場そのものである。
そしてあまり離れすぎると、なにか不測の事態があった時に馬券を買えないという最悪が考えられる……それを避けるためには東京競馬場近くに住む必要がある訳だ。まあ住むとは言っても、身分証もないし保証人もいないのでウィークリーマンションすら借りられないけど。
カプセルホテルやネカフェを転々とする毎日は、いまいち気が休まらないというのが本音だ。なるべく早いとこ住居を用意しないと、精神的によろしくない気がする。ちゃんとしたホテルに泊まればリフレッシュできるんだろうけど、流石にお金がもったいない。
まあホテルに泊まると殺人事件が起きそうな気がするってのもあるけど……とはいえ、この辺は米花町や杯戸町から電車で一時間くらいかかるので、原作で起きた事件には関わらなくて済むと思う。
その二つの町と東京以外の道府県を除けば、コナンくんが関わる事件は驚くほど少ない……筈だ。場所が明記されていない事件もあるし、そもそも犯罪発生率が全国的に驚くほど高いので自衛の必要はあるだろうが。
さて、仕事を探すにあたってのもう一つの条件だが──そう、仕事先が馬鹿みたいにブラックであることだ。ブラックというか、精査されたら一発で業務停止になるようなところと言うべきか。
要は身分証が必要でなく、給料が手渡しである事が望ましい。僕の状況で口座なんか作れやしないし、身分証も用意できないし。
脱税抜け道なんのその、福利厚生なんだそれのクソみたいな経営者だとありがたいのだが……しかしこれが意外と、探しても見つからないのだ。もう少し世間というのはガバガバだと思っていたが、案外そうでもないらしい。
今のところ条件に合致する働き口は一つだけ……東京競馬場から少し米花町よりの、高架下に小さな事務所を構えた怪しげな派遣会社だ。メインは清掃作業員の派遣らしく、パチンコ屋の閉店後の清掃や、何かしらのイベント関連の臨時清掃員を雇い入れているらしい。
その性質上、短期の日雇いが多く、だからこそ人の管理が杜撰なのだろう。まあ僕にとっては助かるんだけど……しかし気になるのは『イベント』である。
『何かしらのイベント』=殺人事件──偏見かもしれないが、そう思ってしまうのは仕方ないだろう。
例えば……そう、コナンくんがパーティー会場にいるとします。貴方は何を思い浮かべましたか? …はい、停電と殺人事件ですね。これがメンタリズムです。
──まあ贅沢は言えない身の上だし、作業場所を選べる上等な身分でもないから仕方ないけど……なんかこう、勘に引っかかるというか、フラグを踏んでいるような気がするというか。
前にもそんな気分になった事があるけど、もしそれが気のせいではないとするならば、やはり怪しいのはこの体だろうか。足が異常に速くなっていることからも、今の僕にアバターの性質が表れているのは間違いない。
そして当然、ゲームのアバターには『主人公』として『事件に巻き込まれやすい、関わりやすい』性質が備わっている訳だ。
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