ハーメルン
黄金船の長い旅路 或いは悲劇の先を幸せにしたい少女の頑張り
???? 女神様の願いと少女の願いと
ゴールドシップは気が付くと不思議な空間にいた。
どこだかわからない。真っ暗な中に光が見える、そんな空間だ。
光っている方に行けばいいのか、逆に行けばいいのか。
どうしていいかわからずに迷っていると声が聞こえてきた。
『ゴールドシップ、あなたは悲劇を変えたいと思いますか?』
優しい女性の声だ。そんな声が天から問いかけてくる。
「変えたい」
ゴールドシップは迷わずにそう答えた。
変えられるものなら変えたい。そんな気持ちがあった。
変えられないからあきらめていたのだから。
お世話になったイクノ教官の涙を止めたかった。
優しいネイチャさんの後悔を止めたかった。
苦しそうなキングさんの苦悩を止めたかった。
止められるなら、確かに止めたかった。
『それに、代償を払う意思はありますか?』
「代償? 代償とは何ですか?」
最初の声と違う声で、また問いかけてきた。
少し凛とした感じの女性の声だ。
急に物騒な話が出てきたと感じたゴールドシップは聞き返す。
ゴールドシップは聡い娘だ。何もわからないうちにすぐ飛びつく、なんてことはしない慎重な娘である。
代償とは何か、問いかける。
相手が何だかわからないのだ。
神だとしても、彼らに人の心はわからない。
悪魔だとしても、彼らには人の心はわからない。
同じ言葉を使っていても、違う意味の可能性がある。
慎重に、慎重に話を進めていく。
『あなたを、悲劇の起点、メジロマックイーンの学園入学の時に飛ばすことができます』
「……すごいですね。代償もすごそうですが」
また違う声が響く。少し幼げが残る声である。
なんとなく気づく。おそらくこの声は三女神様のものだろうと。
こんな経験は初めてであるが、伝承や、いろいろな人から聞いた噂を合わせると何となくそう察した
とするとここは運命の岐路なのだろう。
自分の、もしくは世界の、何かが変わる重要なポイントなのだ。
三女神様と運命の分岐点だということを考えると、過去に飛ばす、というのが荒唐無稽に聞こえないから不思議だ。
ただ、過去に飛んで歴史を変えるなんてことをしたらとんでもないものを取られそうだ。話をちゃんと聞こうとゴールドシップは身構える。
『時間を移動すること自体には代償はありません。ただ、あなたがすることは歴史を変えることです』
「そうですね。全く別の歴史になるように思います」
『変わった歴史がどこに流れ着くのか、私たちにもわかりません。ただ、大きく歴史を変えれば、あなたが生まれてこなくなる可能性が高いのです』
「そりゃまた盛大な話ですねぇ」
タイムパラドックス、みたいなものか。
時間旅行をした者がいない以上、想像の産物の話だったが、それに近いことが起きるということだ。
悲劇も喜劇も全部積み重なった今に、自分は立っている。
悲劇をなくせば土台は崩れるのだ。その先に積み重なるモノは全く別のものだ。
そうなれば自分がいなくなるかもしれない、というのは理解できる話だった。
「生まれてこなくなると、変わった歴史はどうなるんです?」
『そのまま流れていきます。ただ、場合によってはあなたは消えてしまいます。流れの中に存在しない存在になりますから』
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