第9話 フリーダムVSチームトリニティ
アイリス社の軍需工場の襲撃が行われた1時間後。
チームトリニティの武力介入の結果と、隼人の命令違反に不満を抱いているラグナ・ハーヴェイとアレハンドロ・コーナーは、隼人に問いただすべく映像通信で尋問を行っていた。
『貴様ァ! 何故我々の命令を無視した!』
「民間人の犠牲を避ける為ですが、何か問題ありましたか?」
『問題あるに決まってんだろう、この青二才めが! 貴様は道を歩く時は蟻を踏まないように気をつけて歩くのかい? 世界変革という大義に比べれば、人命なんて蟻っころ同然だ! それが分からんのか!』
『ラグナ、もうよい。ミスター・カザマはまだ若い、まだ我々の理想を完全に理解していないのだろう。よって今回は、我々大人たちが手本を見せる時だ。チームトリニティは一旦、ラグナの管理下に置く、異論はないな?』
「異論はありません……(チッ、このクソ共が!)」
スピーカーを通じて部屋中に響くラグナの怒鳴り声に対して、隼人はイラついていた。
心の底から愚痴をこぼしながら、通信を切るのだった。
先程の通信で、ラグナは「世界変革という大義の前に、人命なんて蟻っころ同然だ」と言った。
だが、ラグナは自分の命が、アレハンドロにとっては蟻っころ同然だったということをまだ知らない。ジンクスの生産を終えたその時、用済みとなった彼は、アレハンドロから派遣される刺客・サーシェスによって無残に殺害される。
実に哀れなやつだ。
他者の命を軽視していながら、自分の命が誰かに軽視されていることを全く気づいてない。
「サーシェスのクソ野郎に殺されるなんて真っ平御免だ。そろそろあの3人と一緒に身を引く準備をした方が良いかもしれないな……」
そう考えながら、隼人はチームトリニティの3人の姿を思い浮かべる。原作知識を持った隼人は既に知っている。彼らの正体は、戦う為に作り出された、使い捨てのガンダムマイスターだ。
彼らを仲間に引き入れ、原作の悲惨な結末を回避する為にも、隼人は自分自身のできる限りの最善を尽くすつもりだ。
移動中の3機のガンダムスローネとの通信回線を開き、隼人は自分の伝えたいことを、そのまま3人に伝えることにした。
「ヨハン、ミハエル、ネーナ。他の監視者の意向により、お前たちは一旦、ラグナ・ハーヴェイの管理下に置くことになった。だけど俺は、お前たちを見捨てたりしない。もしやばい状況に陥ったら、何時でも俺を呼べ」
マイクを取り、それだけ言い切って、隼人は通信を一方的に切った。そして、王留美から送られてきた資料を読みながら、小さく呟いた。
「まさかフリーダムのパイロットが、お前だったとはな……悠凪」
王留美から送られてきた資料から、隼人はフリーダムのパイロットの正体を知ってしまった。
その正体は、前世で自分の余りにも愚かな理由で殺害した親友だった男だった。元々仲間に引き入れるつもりでいたが、その正体を知ってしまった隼人は、躊躇いの表情を見せた。
自分の前世の行いを鑑みて、もし悠凪が自分と同じく前世の記憶を引き継いでいるのなら、絶対に自分を許してくれない。会った瞬間、いきなり鉛玉をブチこんでくるかもしれない。
でも、やはり話してみないと分からないし、その行動の真意も知りたい。そう考えた隼人は勇気を出して、嘗ての親友・絢瀬悠凪と連絡を試みるのだった。
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