ハーメルン
世界を越えし自由の翼
第13話 神秘の天使

 悠凪がガンダムラジエルを捜索している頃、格納庫の隣に増設された性能実験施設では、美玖とエイフマン教授はフリーダムの改修プランについて話し合っていた。

「ほう……絢瀬君の改修プランを基に、メインスラスター及び全身のアボジモーターの推力を強化し、さらに頭部の複合センサーを多層マルチアレイ化させる改装か」
「ええ。本来フリーダムは高機動射撃戦に特化した機体ですが、悠凪くんはいつも近接戦闘をしていますから、スラスターとアボジモーターを強化して、姿勢制御と近接戦闘能力を向上させたほうがいいと思います。そして複合センサーの多層マルチアレイ化は、フルバーストモードと精密射撃モード時の精度と情報処理能力を向上させる為の改装です。教授は如何と思いますか?」

 美玖がエイフマン教授に持ちかけたプランは、悠凪が書類に記された改修プランとフリーダムの戦闘データを基に、自分の判断で手を加えたものである。
 高機動射撃戦に特化したフリーダムにデスティニーガンダムのアームウェアを装備させることから、悠凪はフリーダムをよりオールラウンダーの機体に昇華させようとしていることが窺える。そこで美玖は、悠凪から受け継いだガンダム作品の知識と書類に記されたプランを基に、機体性能を十二分に発揮できる改修プランを考案し、エイフマン教授に提出した。

 戦闘においては無力だったが、それでも自分なりに悠凪の役に立ちたいという想いから、このプランを考案したのだ。

「ふむ、悪くない提案じゃ! 後で絢瀬君と話しておこう」

 記された図面と説明文を閲覧したエイフマン教授は、喜んで提案を快諾した。

「ありがとうございます、教授!」

 美玖は軽く一礼をして、感謝の言葉を述べる。
 それから椅子に腰を下ろした美玖とエイフマン教授は熱い紅茶を啜りながら、指令室の窓ガラス越しに生産されたばっかりのパーツと、小型ハロたちの働く景色を眺めるのだった。

 



 1時間が過ぎて、フリーダムは1機のモビルスーツを抱えたまま帰還した。
 モニター越しにそれを見たエイフマン教授は、驚きを隠せないような表情をしながら、性能実験施設を出て格納庫へと向かう。美玖は空いた紅茶のカップを片付けると、その背中についていくのだった。

 MSハンガーに固定されたモビルスーツは青と白を基調とした機体で、頭部のⅤ字ブレードアンテナとツインアイから察するに、ガンダムタイプであることが窺える。
 そして機体各部の設計や両肩のバーニアを見て、エイフマン教授は一つ大胆な推測をした。

「絢瀬君、この機体はもしや……ソレスタルビーイングのガンダム⁉」
「お察しの通りです、教授」

 エイフマン教授が私の持ち帰ったガンダムラジエルを興味津々に眺めている一方で、美玖は私の服の袖をツンツン引っ張りながら話しかけた。

「中にいるあの人、ずっと宇宙を彷徨っていました……悲しいです」
「(美玖の言うのはグラーベのことだな)中にはパイロットの亡骸があるかもしれません。エイフマン教授、コックピットハッチの強制解放をお願いします!」
「……! 分かった、ワシに任せておけ!」

 エイフマン教授は返事して頷くと、携帯式の断層撮影装置で機体内部をスキャンする作業を開始した。普通ならGN粒子の影響でエラーが表示されるが、粒子が尽きた状態だと問題なくスキャンできる。

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