第17話 絆
アメリカに位置するアイリス社の軍需工場の上空では、グラハムの駆るカスタムフラッグは2機のスローネと激しい空中戦を繰り広げていた。
「どれほどの性能差であろうと……!」
カスタムフラッグのパイロット――グラハム・エーカーは左手のプラズマソードを引き抜き、スローネアインに斬りかかる。プラズマソードはアインのGNビームサーベルで受け止められ、そのまま2機は鍔迫り合いになった。
「今日の私は……阿修羅すら凌駕する存在だッ!」
カスタムフラッグは大きく腕を振り抜き、スローネアインの体勢を崩した。
グラハムはこの隙を見逃さず、すぐさまもう1本のプラズマソードを引き抜き、機体のスラスター全開しながらスローネアインへ斬りかかる。アインはGNビームサーベルで2本のプラズマソードを受け止めて見せるが――。
「――ハムキック!」
そう叫んだグラハムは足技を披露し、GNビームサーベルを握るスローネアインの左腕を蹴り上げる。すかさず2本のプラズマソードを手放し、宙を舞うGNビームサーベルを掴み取り、その右腕をGNビームライフルごと斬り落とす。
『ば……バカな⁉』
明らかに格下の機体にダメージを与えず、一方的に圧倒された。ヨハンが目の前の状況に戸惑っている一方で、機体を不時着させたグラハムはヘルメットのバイザーを開け、ごふっと吐血した。
「この程度のGに体が耐えられんとは……」
『兄貴! テメェ、死になぁ!』
ミハエルは怒りの咆哮を上げながら、唯一残された武装――GNビームサーベルを引き抜き、ヒビが入った地面に不時着したカスタムフラッグにとどめを刺そうとビームの光刃を突き刺そうとするが、しかしその進路は、上空から撃って来た粒子ビームによって阻まれた。
『なにっ⁉』
『この粒子ビームは……⁉』
「来たか、我が愛しのガンダムよ! やはり私と君は、運命の赤い糸で結ばれていたようだ!」
四方が火の海と化したアイリス社の軍需工場の上空、追加装備「アヴァランチダッシュ」を装備したガンダムエクシアのコクピットで、刹那は沸々と湧き上がる怒りのままに、2機のスローネを見遣る。
民間人への攻撃未遂。そして、今回もまた民間人の働く施設への攻撃。
このような紛争を繰り広げる行為は決して、ガンダムのすることではない。
故に、彼らはガンダムではない。
刹那は操縦桿を握り締め、目の前にいる2機のスローネに通信を繋げつつ、宣戦を布告する。
「2機の新型ガンダムを紛争幇助対象と断定……アヴァランチダッシュ、目標を駆逐する!」
エクシアが折りたたまれていたGNソードを展開すると、2機のスローネが戦闘態勢に入る。
歴史上初に確認された太陽炉搭載機同士の戦いが今、始まろうとしていた。
双方が交戦を開始した瞬間、宇宙にいるプトレマイオスもエクシアの行き先を掴んだ。
「エクシアが大気圏に突入し、アメリカに位置するアイリス社の軍需工場へ降下! 新型ガンダムと思われる2機と交戦状態に入った模様です!」
クリスの報告を聞き、スメラギとシャルはびくりと体を震わせた。
新型ガンダムの行動は、刹那にとって許しがたいことであるのは理解できるが、王留美を始めとした有力なエージェントたちが殺害された今、地上に降りたら二度と宇宙に戻れなくなる。
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