ハーメルン
世界を越えし自由の翼
第4話 フリーダムVSオーバーフラッグス隊

『まさかな、こんな場所で新しいガンダムと巡り合えるとは……。乙女座の私には、センチメンタリズムな運命を感じずにはいられない。それとも、光の粒子を出していなかったから見つけられたのか……おそらく後者だ!』

 うわぁ……まさか外部スピーカーを通してこちらに精神攻撃を仕掛けてくるとは。
 あまりの喧しさと暑苦しさに、私は思わず眉を顰めた。

「この変人め! これだけ近いなら、バルカンで!」

 カーボンナノチューブの20倍の引張り強度を持つEカーボン装甲とはいえ、三大国軍のモビルスーツに使われているものはCB製のものより脆い。
 それにフラッグは、装甲を削って機動性と運動性を重視した設計のモビルスーツだ。そう、いわゆる「紙装甲」ってやつだ。近接防御機関砲でも致命傷を与えられるはず。

 目の前にいるグラハム機に照準を定め、私はトリガーにかけた指に力を入れる。フリーダムの頭部に内蔵された「ピクウス76mm近接防御機関砲」が火を噴き、至近距離から射出された弾丸の嵐は、グラハム機に降りかかる。

『なんとぉ!』

 その瞬間、グラハム機がスラスターを噴かして急速に遠ざかってゆく。即座に右腕に装備されたディフェンスロッドを回転させ、近接防御機関砲の弾丸をことごとく弾き飛ばしていく。

『あまりに非力だ……まるで深窓の令嬢のようだよ!』
「な……なんなんですか、この人……!」

 何が「深窓の令嬢」だ! ガンダムを女性扱いしているなこいつ!
 同時に、この発言を聞いた美玖はドン引きしたように身体を震わせた。

「(もうこれ以上付き合っていられない、さっさと片付ける!)」

 そう考えると、私は素早くコンソールを操作して、フリーダムのAAWを広げさせ、機体の稼働モードをハイマットモードへ移行させる。すかさずにスラスターを噴かせて、グラハム機の間合いから離脱する。
 グラハム・エーカーもそうやすやすとこちらを見逃すはずがなく、すぐ追いかけてきた。急接近するグラハム機にフリーダムを正対させると、私はビームライフルの銃口を向けた。
 その黒い機影がこちらの射程圏内に捉えた瞬間、私はためらうことなく、トリガーにかけた指に力を込めた。

「狙い撃つ!」

 銃口から放たれた光条が、グラハム機に向かって一直線に殺到する。
 グラハムは即座にディフェンスロッドを回転させビームライフルの光条を受け流すが、桁外れの出力を持つビームに耐え切れず、溶解してしまった。

『よくも……私のフラッグを!』
『た、隊長ぉ!』
『グラハム隊長、援護します!』
『我々も続くぞ!』

 今度はスピーカーからではなく、言葉が走って聞こえた。
 フリーダムに搭載されたサイコミュがやつらの声を拾ったのか?

 損傷したグラハム機を援護すべく、ダリル機とハワード機を先頭に14機のオーバーフラッグはフォーメーションを組み、リニアライフルで波状攻撃を仕掛けてきた。
 私は操縦桿を強く握り締め、ペダルを踏みつける。機体を180度反転させて、迫り来るリニアライフルの銃弾を躱しながら姿勢制御を行なう。
 背後から迫るグラハム機が放つ銃弾を横ロールで回避してから、両翼に収納された二門の「バラエーナ・プラズマ収束ビーム砲」を展開させ、オーバーフラッグの編隊に向けて一射した。

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