12.特級呪霊ジャンヌダルク・オルタ~その胸で聖女は無理があるでしょう~(1)
感性の強い子供は、大人より呪霊という存在に敏感だ。子供の中には、非呪術師の家系から突然変異で高い呪力を持つ子供が産まれてくる事がある。往々にして、その子供は不幸だ。
人は眼に見える物しか信じない。だから、子供が幽霊やお化けがいると常に言うとどうなるか……気味が悪い存在に思われる。そして、我が子への愛情と天秤に乗せられる。天秤が愛情以外の方向に傾く場合が多い。
その行き着く先は、児童虐待。
国家としても、児童虐待問題の解決は難しい。家庭内事情に首を突っ込みづらいし、往々にして揉めるため、費用対効果が悪い。公務員は、色々と業務を抱えており、児童問題にだけ注力する事が出来ないからだ。
家庭問題と行政に間につけ込んだのが呪術業界だ。
呪霊を肉眼で確認出来る呪力を持つ子供。要らないのならば、金で買い取ると。買い取った目的は幾つかある。オーソドックスなのが、自らの呪力を後生に残す為の子作り用。最悪なのが、呪術の実験やその神秘の解明のためモルモット扱い。
児童売春どころか人身売買が平然と日本で行われている。
そんな呪術師達の勝手が許されて良いのだろうか、許されて良いわけがない!!
呪霊問題に加え、呪力を持つ特殊な児童問題解決にも手を出すサイバーダイン・システムズ。国家としても人身売買をする呪術業界を知っていて見逃しているとは思われたくない。この事が公になれば困りますよねと優しく呟くと、快く協力を申し出る。そして、把握している呪力を持つ子供の情報を提供する。
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呪術高専一年に依頼された事は、昨今発生している児童が行方不明になる事件の調査だ。日本で発生する行方不明事件には、呪霊が関わっている事が多い。よって、この手の仕事は呪術師達の食い扶持である。
その調査に派遣されるのは、虎杖悠仁、伏黒恵、釘崎野薔薇の生徒三名に加えて、引率の五条悟だ。五条悟には、虎杖悠仁の暴走抑止と伏黒恵の監視も仕事に含まれている。
「五条先生、調査といっても何から始めるの? 近所の聞き込みとか?」
「悠仁は、素直だね。まぁ、そういった雑務は、補助監督達の仕事。僕達は、その調査結果から実行犯の排除と子供達の救出。ちなみに、二級呪術師が既に失敗している。でも、安心してよ。今回は、僕も着いていくから」
「で、その実行犯とやらは何処にいるんすか? まぁ、今回の呪霊はどうせ糞野郎だし、遠慮なくぶちのめせるな。先生、終わったら銀座で寿司お願いね」
「ずりーー釘崎。俺は魚より肉が食いたいんだって。な、伏黒もそうだろう?」
「俺も寿司に賛成だ。肉は、昨夜…いいや何でも無い」
そして、五条悟の先導されて着いた場所は修道院だった。
実質、児童養護施設も兼ねている。施設は、最近建築されたかのように清潔感が溢れている。敷地内には、庭で遊ぶ子供達。
そこには確かに笑顔があった。ある少年は、サッカーを。ある少女は砂場で。平日のお昼に相応しい平和的な光景であった。但し、そこで遊んでいる少年少女達が、補助監督達から渡された資料にいる人物であるという一点を除けばだ。
『こらこら、ガキども遊んでないでお昼の準備を手伝いなさい。全く、なんで私が洗濯や食事の準備なんて~』
色白で銀髪の修道女。だが、遠目でも分かるほどの整った容姿……プロポーションも抜群であった。
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