ハーメルン
呪霊GO
16.閑話~三輪霞~

 呪術師界隈では、とある企業が出している秘密の高額アルバイトで除霊より稼いでいる者達が多い。その大半が、呪具の制作技能を持つ者や珍しい術式を持つ者達ばかりだ。当然、儲け話には裏がある。誰もがアルバイトを終えた後、どんな仕事内容だったか記憶していない。

 金を切実に必要としている呪術師――三輪霞。

 姉妹校交流会にて、活躍の場がないだけでなく、特級呪霊襲撃の際は寝て過ごした強者。更には、禪院真希に取られた呪具の刀剣は真っ二つ。そのお陰で、仕事にも影響が出ていた。

 彼女の家は、貧乏であり、二人の弟がいる。それ故に、彼女は家庭を支える為にも早期に前線復帰して稼ぐ事が必要だ。だが、新しい呪具を用意するにしても、高い。レンタルするにしても求める品質の呪具でなかったり、得意な獲物でなかったり、散々だ。

 ここ最近では、呪術師に依頼が回ってくる仕事は2級呪霊が関わる案件が殆どであり、3級呪術師の彼女には荷が重い。仕事道具の呪具次第ではどうとでもなる範囲だが、今の彼女にはどうしようもなかった。

 しかし、捨てる神あれば拾う神あり。

 三輪霞は、メカ丸の紹介で大口案件のお仕事が回ってきていた。メカ丸の製造にも関わっている日本屈指の大企業サイバーダイン・システムズ。今現在、彼女は、お仕事について説明を受けて契約直前であった。

「あの~義善さん、本当に仕事というのは呪霊と全力で模擬戦をするだけですか?」

「その通りですよ、三輪霞様。一週間、我々が指定した場所で指定したターゲットと模擬戦をするだけ。万が一怪我などをされた場合でも完璧に治癒致します。我々はクリーンな企業ですので、企業イメージを損なうような事は致しません」

 三輪霞は、信頼できる仲間からの紹介である為、前向きであった。

 更には、流石は大企業といえる契約金。前金で1000万、後金で1000万。更には、気に入った呪具を一つ貰えるという大盤振る舞い。コレに乗らない手はなかった。短期間でこれだけ稼げるなど特級呪霊の除霊くらいだ。

「分かりました!! この役立たず三輪、お仕事をしっかりやり遂げます」

「それは僥倖です。我々の仕事は機密が多いので、注意事項は絶対厳守です。損害賠償は、一般人の生涯年収を遙かに凌駕しますので、命を賭けてくださいね(・・・・・・・・・・)

 金額に似合った縛り。

 だが、命の危険が無く短期間でこれだけの金額を稼げるのだから当然だ。しかも、違法性のない仕事だ。相手も縛りを結んでいる以上、絶対安全であった。

………
……


 三輪霞、契約書にサインしてそのまま仕事にうつる。彼女は、義善聖徳の後に続きサイバーダイン・システムズを歩く。道中では、一般人が見ることがないような最先端技術の研究が行われている。

 その最奥にまで辿り着き、エレベータにのる二人。

「三輪霞様。呪術師の方において縛りは絶対です。我々は貴方に危害は加えません。ここで知り得た事は外部に漏らさない。命を賭けて貰っています」

「えぇ、その通りです。なんで今更?」

 エレベータを降りた先にある扉を幾つも進んだ。最後の扉の前で義善聖徳は、改めて契約内容と縛りを再確認する。その理由は……。

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