ハーメルン
ティアナ様は告らせたい~少女(一部女性含む)たちの恋愛頭脳戦~
クウカは慰めたい

 【ヴァイスフリューゲル ランドソル支部】に所属しているクウカは極度の被虐性向、いわゆるドMだ。そのため、最前列で常に攻撃を受け続けることに喜び、否、悦びを得られる。
 己の体を張ることこそ至上。それでこそ耐久役(タンク)というもの。幽霊だのもふもふだの黒鉄の鎧だなんてのは飾りです。攻撃役(アタッカー)にはそれがわからないんです……。
 しかも相手を挑発することで攻撃を一手に引き受けることができる。多数の視線が突き刺さる感覚は筆舌に尽くしがたい。じゅるり。
 糸で織り上げたバリアだの即興のステージで注目を集めるのとは訳が違う。ただ、糸を張り巡らせる動きにはしなやかさと人を魅了するメリハリがある。そして、あの踊りは可愛いしキレがあって素敵なんですよね。クウカも歌ったらいいん……う、歌うなんて恥ずかしくて無理ですぅ~!!

 つまり、いくら極度の被虐性向を持っていても限度がある。
 例えば、クウカがドSさんと呼び慕……従うユウキからの言葉であれば素直に聞けるが、それ以外の人間からの行き過ぎた言葉に対しては恐怖が先行する。
 それに、ユウキはクウカが望むことを実際に実行したことはない。例によって言葉の少ないユウキの発言の行間を読み、クウカが妄想力を全開にすることで、クウカの被虐性向は満たされているのだ。
 ……ユウキ限定ファッションドMとか言わない。実際にやられることはない、という安堵から自身を追い込むことが楽しいのだ。
 加えて、ユウキは決してクウカの行き過ぎた妄想を否定しない。クウカが更に妄想を重ねて、自身にいいように捉えているのもあるが、だからといって避けるような真似はしない。それどころか遊びに誘ってくれることすらある。
 そのため、ユウキ以外の人間からの強気な態度や攻撃の意思などは苦手だ。
 だというのに。
「……なんで『壊し屋(デストロイヤー)』さんが、クウカの隣に座っているのでしょう……?」

 『壊し屋(デストロイヤー)』ことエリコ。【トワイライトキャラバン】に所属している魔族だ。
 ランドソルの日陰者で、エリコ、そして【トワイライトキャラバン】を知らないものはいないとさえ言われている、非常に危険なギルドだ。
 何しろ、街中でも魔法をぶっ放す破壊活動、違法な医療行為に非合法な薬物の蔓延の助長、行き過ぎた自警行為や買い占め、そして日陰者だけでなく魔物すら配下とするなど、もはや犯罪予備軍がギルドの名を騙っているとしか言いようがない。
 なぜギルド申請が通ったのか不思議すぎる。

 その危険人物でも筆頭のやべーやつと目されるエリコはというと、同性のクウカでも見惚れるほどの驚愕の美少女だ。
 長めのショートカットにされた錆色の髪はツヤがあり、きちんと手入れされているのが分かる。睫毛は長く、ぴんと上を向いている。やや伏し目がちながら目は大きい。じっと見つめられれば吸い込まれそうだ。
 ちょこん、と顔の中央にある鼻は小さく、形もいい。そして、薄く笑みを浮かべている口元。リップクリームを薄く塗っているだけだというのに、妙な艶めかしさを感じる。

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