ハーメルン
起きたら金髪碧眼の美少女聖女だったので、似たような奴らと共同生活始めました
聖女、バイト(?)に誘われる

「なんでスカートってこんなひらひらしてるんですかね……?」

 女になってしばらく経ち、ようやく女の身体を認められるようになってきた。
(諦めたとも言う)
 とはいえ、女の身体に纏わるあれこれまで受け入れるのはなかなかにハードルが高い。

 例えば、今着ている淡い水色の春夏ものワンピース。歩くだけでひらひらするし、そのまま椅子に座ろうとすると下着が直に触れて冷たい。
 ノワール達が「冷たい以前にはしたない」と言うのは正直ピンと来ないが、とりあえず、スカートをいちいち撫でつけて座ると仕草が女っぽくなる。

 そういう小さな変化を実感する度、俺としては「うわあ」という気分になる。
 ある日の夕食後、皿の片付いた(片付けたのはノワールだが)テーブルに突っ伏して呻くと、既に新しい身体に馴染んでいる先輩方が答えてくれた。

「なんでって、可愛いからじゃない?」
「男性と違い、前ファスナーのあるパンツ類にあまり利便性がなかったからではないでしょうか」
「トイレが楽だからだと思うよー」
「ふむ。女の服飾の歴史は長い。一概には言えんし吾輩もさすがに専門外なので『ググれ』という話になってしまうが、まあ、東洋においても着物等にそういった傾向がある以上、なんらかの意味があるのだろうな」

 四人それぞれに「らしい」見解だが、総合すると「諦めて穿け」ということだ。

「で、でも、今は女でもパンツ? ズボン? 穿くのなんて普通だよな?」
「そうだけど、アリスちゃんがやっても『可愛い子が男装してる』ようにしか見えないかも?」
「ぐ……っ!? 髪か、髪のせいか? ならいっそのこと丸刈りに──」
「絶対駄目です!」

 珍しくノワールが強い声を出して反対した。
 せっかくの綺麗な金髪を自ら放棄するような真似は神様も許しません、とのこと。

「ま、別にパンツルックもファッションとしては全然アリだと思うけど、男性用じゃあんたのサイズは殆どないんじゃない?」
「それから、トップスに関してはメンズとレディースではボタンが左右逆になるからそこも気をつけた方がいいだろうな」
「……面倒くさいな」

 子供用ならいっぱいあるだろうけど、と笑う朱華と、真面目な顔で注意事項を口にしてくる教授。
 ボタンに関しては既に何度か経験済みだが、正直やりづらい。手癖で留めていたのが向きが逆になったせいで上手くいかなくなり、いちいち意識して指を動かさないといけないからだ。まあ、慣れれば無意識にできるようになるだろうが、そんな慣れはいらない。
 シルビアはあまり興味がないのか「そんなことより」と話題を打ち切ると、俺にすり寄ってきて、

「……今日も夜の実験頑張れるようにヒールちょうだい?」
「やりますから耳元で囁かないでください!」

 この人は何かにつけて胸を押し付けてくるから困る。
 家では大抵白衣を着て部屋で実験している癖に、香ってくるのは甘くていい匂いだし、一体どうなっているのやら。
 そんなシルビアは前に回復魔法を受けて以来、毎日のように回復をねだってくる。
 疲れが取れるので徹夜した時の負担が全然違うらしい。俺としては騒音で起こされることになるので、むしろあんまり頑張って欲しくなかったりするのだが。

「じゃあ、アリス。ついでに吾輩にも頼む」

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