17.ゴールドシチー『ゴールドシチーという名前の女の子』
よく晴れた日の6月下旬。
段々と夏が近づき、気温も30度近くなってくる太陽に文句を言いつつ、俺は自転車で高校に向かう途中にコンビニへと寄る。
目的は昼に食べる弁当と、今日発売の女性向けファッション雑誌。
よく行くコンビニのためか、会計の時に店員になんでこんなのを買うんだと一瞬だけ不思議がられたが必要な買い物なんだ。
この雑誌には幼馴染で、今はトレセン学園にいるゴールドシチーがモデルとしてインタビュー記事があるから。
買った雑誌を通学カバンに入れると、昼休みに読むまでの時間が楽しみだ。
こんなにも楽しみな理由は、俺がシチーに片想いをしているから。
幼稚園から中学まではずっと一緒に過ごしてきた。
お互いの家へ入り浸り、何をするにも仲が良くて。友達たちにからかわれて一時期距離を置いてしまうことがあったものの、親友といった関係になっていた。
関係が変わったのは中学が終わってから。
俺は地元東京の高校へ行き、シチーは同じ都内のトレセン学園へ。
中学の時からモデルとして活躍していたが、それだけでなくウマ娘だからこそ走る自分を見てもらいたいと希望に満ちた顔で言っていた。
今までずっといたシチーと離れて1年と少し。
高校2年生となってから、恋愛感情としてシチーが好きだという気持ちに気づいた。彼女を好きになった理由は長年一緒に育ってきたせいなのか、一緒にいると落ち着くから。
今まで一緒にいたのに、離れてから大事なのは何かということに気づいた自分自身をバカにする。
恋愛感情に気づいてからはずっと気持ちが重く、どうすればいいのかと悩む。
シチーは仕事とトレーニング、それとレースで忙しくて会うのは長期休みの時だけ。
あとはスマホでテレビ電話をするぐらいに。
それしか接する機会がなくて寂しく、1日ずっと一緒にいた昔のことがひどく遠くに感じてしまう。
シチーのほうは寂しいのかはわからない。
あいつはいつだって自分の感情を隠すのが上手で、言ってくれないと俺はわからなかった。
ウマ娘は尻尾と耳で感情がわかるものだが、大事な話になるとシチーは俺の背中におおいかぶさってくっついてきては尻尾や耳の様子を見せてくれなかった。
時には背中合わせやすぐ隣にいることも。そういうのが小学校の終わり頃からはじまった。
でも感情がわからなくても、一緒にいてくれることから、俺のことを悪く思っていないことはわかった。
時々会う今でも昔と同じようにしてくるし。
だから会えない寂しさをごまかすために、俺はシチーが出ている雑誌を全部買い、テレビCMは何度も見た。
そのことを言ったら『全部見ているの? マメだね、マサキも』とめんどくさげに言っていたが俺の名前を呼びながら喜んでくれていた。
ストーカーなの、と言われなくて安心し、今は堂々と自信を持ってシチーのおっかけをしている。
昼飯を食べたあとに、暑いせいか屋上で誰もいなく1人静かに見ている今も。
だが、雑誌のインタビュー記事にはシチーが恋人にしたいタイプを語っていた。
それが俺とは違うものだった。
内容は年上で頼りがいがあり、アタシの中身を見てくれる人が好みの男性だと。
片想いしているからこそ、このインタビュー記事は心にぐっさりと深く刺さる。あまりにも気になって睡眠時間が減りそうなほどに。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/7
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク