ハーメルン
アサルトリリィーPARASITEー
十四話

 翌日、悠斗が猫と戯れている時に端末から一つの着信音が鳴り響く。その音に猫がビビり、逃げ出したので少しがくりとしたが、切り替えて端末をポケットから出した。

「……へぇ?」

 そこには、珍しい名前が表示されていた。

「もしもし、どうした?」

「ごきげんよう悠斗さん。この前のHUGE討伐以来ですね」

「そうだな、神琳。あの時は話せなかったけどな」

 郭神琳。幼稚舎の頃から百合ケ丘にいる生え抜きのリリィで、オッドアイが特徴的な美少女である。何がとは言わないが、でかい。

「それでどうした? 亜羅椰の愚痴か?」

「いえ、それは違うのですが、少し頼み事が────」







「雨嘉さん。こちらが分かる?」

 数分後、とあるポイントに来て欲しいと言われた悠斗は、何故かいつも使っている専用CHARMのマソレリックと、アステリオンを準備していた神琳と合流。どうやら、一キロ先にいる王雨嘉という少女が一流のリリィだということを証明するための立会人として呼ばれたのだ。

「……! うん!」

 雨嘉は、太陽の光に反射したマソレリックの輝きに反応し、返事をする。

「そこから、私をお撃ちなさい」

「……え!?」

「訓練弾なら大丈夫よ」

「そんなわけっ────」

「装填数十発。きちんと狙えたら、私からは何も申しません」

 そして、神琳は一方的に通信を切ったが、端末に優しく呟く。

「大丈夫。あなたなら出来るわ」

「……それ、本人に直接言ってあげたらどうかね」

「……お立ち会い、本当にありがとうございます、悠斗さん」

「別に、神琳からの頼み事だしな。あと、梨璃さんのレギオンメンバー候補の実力を見ておきたいというのもある…………アイルランドの名門、王家の実力……果たして如何なものか」

 きっと、この場に雨嘉がいたら「私はヘボリリィだから!」と否定するだろう。

「それで、彼女……王さんのレアスキルは?」

「天の秤目……遠く離れたものも、寸分の誤差なく把握する。それが、雨嘉さんのレアスキルです」

「…………へぇ?」

(撃ちなさい、雨嘉さん。撃って、あなたが一流のリリィであることを証明なさい!)

 そして、その瞬間、青色に輝いた訓練弾が神琳に向かって真っ直ぐにやってきたが、神琳はアステリオンを横なぎにして弾き飛ばす。その余波で、青色に輝くスパークが撒き散らされる。

「雨嘉さんとの距離は約一キロ。アステリオンの初速は毎秒1800mだから、瞬きするくらいの時間はあります。狙いが正確なら、躱せます」

「なるほど、正確ねぇ……」

 ──―いや、まぁどれだけ正確だろうと普通に神琳がやってるのは神業のレベルになるんだが……。

 悠斗が同じことをやれと言われても出来る自信はない。

「それで、いつものCHARMは使わないのか?」

「対等な条件にしておきたいので」

 そして、そこからもさらに一発一発と繰り返し、八発目。海風から強い風が吹いた。

 ────かなりの強風だな。これだと訓練弾であろうともそれるぞ? 

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