1話
この世界に生まれ落ちたのが、二十五年前。
空は広く青く澄んでいて空気は綺麗。見た事の無い大自然が広がっている。
しかし見慣れない生物が飛び回り、街や村では牛や馬ではなく、馬鹿みたいに大きい恐竜みたいなのが荷馬車を引く。
何処か見た事がある光景。
そう、簡単に言えばモンスターハンターの世界だ。
はっきり言って、しっかりと自分の意識を持ってそれを認識した時はそれはもう、興奮したものだ。
何せゲームの画面越しの世界の出来事で、システム上でしかそれらの世界を感じる事が出来なかったのに今は本当にこの世界に生まれ生きて、そして生活している。
ヘビープレイヤーでは無かったが、携帯ゲーム機のものや、家庭用ゲームはそれなりに作品をやって来た。
流石にPCなんかの作品はやっていなかったが。
ある種の憧れを持つ、持ってしまう世界だ。
強いハンターになって、モンスターを討伐して、ちやほやされたい。
誰だって一度は思った事があるだろう。
ゲームや小説の中で語られる物語に憧れ、想いを馳せ、その世界に強く惹かれていた事だろう。
しかし、幻想が現実になった時。
それは地獄を意味する。
この世界はゲームほど、甘くは無かった。
よくよくしっかり考えればわかる事なのだが浮かれていた俺は思い知らされる事になる。
幻想は幻想のままが一番だと心の底から思う様になる。
考えても見れば、体長が二十mを超えるようなモンスターが至極当たり前の様に闊歩しているのだ。
ティラノサウルスよりもデカくて空を飛ぶ生物、と考えれば考えやすいだろう。
どれだけ小さくとも体長数mなんて当たり前だ。
となれば、硬い鱗や甲殻に覆われているでも無く、鋭い爪を持っている訳でも無い我々人間はどう考えたって被捕食者側な訳だ。
さらに付け加えて言うならば極端なまでの弱肉強食の世界なものだから、強ければ生き残れるが弱ければ簡単に淘汰される。
要は簡単に死ぬと言うこと。
余り言いたくは無いが、モンスターと言う強大な存在がいるこの世界では、命を失うなんて当たり前だ。
村の中にいても襲撃されることもあるし、旅に出たり行商中であろうと襲われる。
しかも国同士の戦争もあるし、命の重さは、はっきり言って軽い。
そんな世界に転生した俺が生まれたのは、ハンターも居ない小さな小さな農村だった。
人口は数十人程度、農業が主で狩りなんて出来ない。村の一歩外に出れば戦う術を持たない農民なんてモンスターの格好の獲物だからだ。
しかも子供が少ない。同年代の子供は俺を入れて僅か三人だけ。
そりゃぁ、大層可愛がられたものだ。
話を戻そう。
小型とは言え、モンスターはモンスター。
原作の、ジャギィやジャギノスと言った雑魚モンスターと呼ばれる存在だって十分以上に脅威だ。
武器を満足に扱うどころか振るうことすら出来ない農民には、どうやったって勝つことはできない。
村の周りを堀と壁で囲い、モンスターの侵入を防ぐ。
その堀と壁だけが、頼りの村。
現実を突きつけられた時は、それはそれは絶望した。
こんな厳しい世界で、俺の様な軟弱者が生き残れるのか、と。
不安で怖くて仕方が無くて。
だからこそ、生き残るための力を欲した。
[9]前書き [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/22
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク