ハーメルン
龍の恩返し
6話







老山龍の一件から早五十年。
功績を認められ、ハンターランクが8にまで上がったがそれ以外にこれと言って変わった事は無い。

天廻龍の一件があった程度ではあるが、その一件もどうにかこうにか収まった。
収めたのは俺では無いから詳しい話は分からないが、どうやらハンターの中でも選り抜きの腕を持った者達が事に当たったらしい。

と言うことは、天廻龍と戦い勝った、と言うことだ。
それに関して俺もディアも何かある、というわけでは無い。

この世界は常に生存競争であり、天廻龍と人間の戦いもまたその一部に過ぎないからだ。
ある種の縄張り争いだ。

確かに老山龍は話をすれば提案を受け入れてくれたが、天廻龍が老山龍同様に話が分かるか、と言われると無理があるからだ。

それに老山龍の件に関しては手を貸すと言ったがそれ以上は干渉しない、と言ってある。

非情かもしれないが、なるべくしてそうなった、と思っておこう。 
天廻龍と言う古龍は、単為生殖、所謂番を必要としない方法で種を増やすのだが、その増やし方がなんとまぁ、モンスターハンターの世界らしからぬ方法なのだ。

と言うのも天廻龍の凶竜ウイルスに侵された竜が死ぬと、詳しい過程は分からないがその死体を苗床にして黒蝕竜が生まれてくるらしいのだ。
しかも大型、中型モンスターに限ってらしい。
推測ではあるが、苗床が小さかったり弱かったりすると単純に産まれてくる黒蝕竜が弱く、他の生物との生存競争に負けてしまうから進化の過程でそうなったのでは?と思う。

しかも黒蝕竜として産まれたとしても実は天廻龍になる事が出来る黒蝕竜は極々一握り。
しかも子育てと言う事をしないから、その天廻龍に至るまでの過程がディア達を以てしても分からないんだとか。

そんな話をディアに聞かされたりしたが、とにかくこの一件は落ち着いた、と言う事だ。






そして、年月が経つに連れて皆が天廻龍の騒動を忘れていく頃。
天廻龍以上の大事件、いや、大ニュースがつい先日世界中を駆け巡った。

そう、新大陸の発見である。

あぁ、前世のアメリカ大陸を見つけたコロンブス達や、それを知らされた人達の気持ちと言うのはこんなものだったのだろうか。

知っているとは言え、余りにも冒険心や好奇心が掻き立てられるではないか。
やはり娯楽の少ないこの世界では、特に知的好奇心と言うのが永く生きていると欲求不満になるのだ。
新しい事を学び覚える事に対して、これ程までに心躍り、自分から飛び込んで行くなどとは、前世の俺からすれば生活環境など様々な理由があるが、やはり到底想像も付かないであろう。



「ディア、新大陸の事は知っているのか?」

「いや、知らん。話を聞くに、龍を追いかけて行ったら発見したのだろう?多分、その龍達は皆共通して老齢である筈だ。恐らく人間達が言う新大陸は幾つかの種の龍達が死期を悟ると行く場所の事だろう。そこであるならば行った事は無い。人間が遥か昔に作った大きな大きな塔がある大陸ならば行った事があるが」

「死期を悟ると行くのか?」

「あぁ」

「何故行くのだ?」

「あそこには、私も行った事が無いから分からないが、何やら本能が行かねば、と訴えるらしい。私の種族は行かないがな」

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