ハーメルン
〜鳴神の太刀〜 ゴブリンスレイヤー フロムイミテイシヨン
1-4:戦い続ける者/Survivor
よくある依頼だった。
ゴブリンを見た。作物を盗まれた。家畜を奪われた。娘が攫われた。助けてくれ。
よくある話だった。
冒険者歴数分の新人たちが、肩慣らしだと依頼を受けた。二時間後には現地にいた。あれから一日が過ぎている。
「俺は三百年続く冒険者一族の八代目だ。初代から受け継がれてきた技がある。素人と思わないでくれよ」
勇ましく剣を振りかざした彼は、ゴブリンを三体殺した。それが彼の戦果のすべてとなった。彼の血脈は、こうして断絶した。
「僕にはすごい特技なんてありませんが、ギルド職員として学んだ知識があります。これからは支援するためではなく、肩を並べて戦うためにそれを使います!」
彼はもう二度とギルドの敷居を跨ぐことはない。彼の頭に詰め込まれた知識は、冷たい土の上にこぼれて流れた。
「へぇ、虫螻の中にもそんなでかいやつがいるんだ。ま、そのホブとかいうのが出たら、あたしが派手に燃やしてやるよ」
ホブゴブリンはいなかった。彼女はこの場でまだ一度も呪文を唱えていない。喉を震わせ叫んだのは、罵詈雑言と命乞いと、あとは意味を成さないただの音だった。
よくある結末だった。
ありふれた冒険者たちの、ありふれた悲劇だった。どこかの村がゴブリンの魔の手から救われる、少し前に。
残念ながら彼らの冒険は、ここで終わってしまったのだ。
§
「巴の雷?」
森に分け入る冒険者の一党。その
頭目
(
リーダー
)
たるゴブリンスレイヤーは、聞き馴れぬ言葉に
鸚鵡
(
オウム
)
返した。
「ああ。戦の前に教えておく」
大きな体で器用に木々のあいだを抜けていくのは足軽、ではなく侍だ。腰に大太刀肩に外套、背には大弓。完全武装なら、それなりに様にはなる。
「待ってました! もうずーっと気になってたんだから」
先頭をゆく妖精弓手は勝手知ったる未開の森林、と後ろ歩きで危なげなく進む。
樹精
(
ドライアード
)
が散歩しているかのようだった。
「前を見んかい前を。あ、いや見てんのか。胸と背中の区別がつかんわ」
精霊使いたる鉱人道士には、そうは感ぜられなかったのか。売り言葉は在庫が尽きず、買い手にも事欠かず。始まった舌戦はもはや冒険の
環境音
(
B G M
)
のようなもの、と言うにはいささかやかましすぎた。
「お二方。侍殿から大切なお知らせがあるようだ、離れるか口をつぐむかされたい」
シュッと鋭く息を吐いた蜥蜴僧侶の一睨は、蛇よりも恐ろしい。森はそれなりの静寂を取り戻した。
「雷、昨日のあれですよね。
呪的資源
(
リソース
)
の把握は基本ですから、はい。ぜひ教えてください」
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