第4話 造反
神提督の鎮守府へ着任したわたしは、一ヶ月後初めての出撃に赴いた。
けど、そこで記憶はとぎれた。
次に気づいたときには、護送車に閉じ込められて、解体施設へ連れていかれる直前だった。
そこから不知火という艦娘に助けられたわたしは、なぞの施設で半年間昏睡していたらしい。
それだけでも頭がいっぱいだが、施設の責任者の高宮中佐が言った言葉は、比ではなかった。
「お前は造反の罪により、解体されることになった」
唖然としていた。それ以外のリアクションが分からない。
意味不明にも限度がある。初陣のあとの抜け落ちた記憶、あの間になにがあった? わたしはなにをした?
「……神提督は、生きてるって言ったぴょん?」
「ああ、彼は生きている。重症だが、話せないほどではない」
「なら提督と話をさせてほしいぴょん、うーちゃんが造反なんてしてないって言ってくれるぴょん」
藁にもすがる気持ちだ。神提督がわたしの潔白を知っている根拠はなにもない。でも、わたし以外の生き残りは提督と間宮さんしかいない。
それに、提督なら。そんな気持ちもあった。
あの人ならわたしを助けてくれるかもしれない。卯月はわずかな希望を抱く。
それが、もっとも最悪な形で壊されるとも知らずに。
「不可能だな」
「そんなことないぴょ──」
「お前が造反者と証言したのは、他ならぬ神躍斗少佐本人だ」
もはや言葉もでなかった。
提督が、証言した? わたしが、造反者だって?
「なんで?」
卯月は呟く。全てが理解のそとにある。悲しいとか悔しいとか、感じるだけの余裕もない。
「端的に言えばスケープゴートだ」
「生け贄? なんの?」
「神少佐が、提督を続けるための。鎮守府壊滅の責任を負わないため」
仮に、鎮守府壊滅が深海棲艦の奇襲だったとき、責任を負うのは提督である。
そうなれば、神躍斗は提督をとうぶんできなくなる。少なくとも謹慎処分は確実だ。
だが、大本営はそれを許さなかった。
このご時世に、貴重な戦力を遊ばせる余裕はない。国民からの信頼もなくなってしまう。外国がつけ入るかもしれない。
それに、大本営のメンツが立たない。
大本営は、卯月を奇襲の実行犯に仕立て上げた。この戦争始まって以来、初めての裏切り者。誰も予想できないことなら、責任は緩和されるからだ。
提督が負けても仕方がなかったことにして、全責任を卯月におっかぶせる。こうすれば大本営のメンツは立ち、神少佐は提督を続けることができる。
これで万事解決、すべてが上手くいったのだ。
高宮中佐の説明を聞いた卯月は、なんの反応も示さなかった。
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