ハーメルン
恋姫†無双 ~漢ノ朱儁ココニ有リ~
十六

 劉備陣営と共に始まった黄巾賊討伐であるが、そこに劉備の姿は無かった。一刀の言葉がよほどショックだったのだろう。どうやら体調を崩したようで、戦場に出てきている将は、関羽や張飛といった劉備の義妹たちばかりであった。
 正直、言い過ぎたかなと一刀は思う。劉備のあまりに無責任な発言に怒りを露にし、彼女を断罪するかの如くボコボコに言い負かした。
 しかし、その一方で彼女の言葉は、ある意味では的を射ていた。確かに、このような状況を招いたのは漢王朝の腐敗が招いた事であり、都の高官として君臨する一刀に責任が全く無い訳ではない。なんせ、張譲など宦官どもの専横を許してしまったのだから。そのような意識があったからこそ、劉備に図星を刺されて我を忘れてしまったのだ。
 とはいえ、一刀もただ黙ってこの状況を見過ごす気は無い。彼自身もこの状況を変えるべく、裏で色々と画策していたのだ。偶然や成り行きがあったにせよ、傾を始め風鈴や楼杏など、朝廷で高い地位に就いている女たちと深い仲になったのも、後に宦官どもを駆逐し、新たな朝廷の礎を築くため。もちろん、一刀は彼女たちを愛しているからこそ何度も抱いたのだが、単に色欲や愛情だけで彼女たちを抱いてきた訳でもなかった。


*****


 さて、一刀と劉備義勇軍による賊討伐であるが、賊どもの抵抗も空しく完全に討伐された。そもそも、平原での戦の経験を積んできた揚州兵たちや、関羽や張飛といった猛将が相手なのだ。賊どもではひとたまりも無かった。
 黄巾賊の勢いが最も勢いの強かった冀州で賊どもが平定され、黄巾の乱は終息に向かっていく。だが、今回の乱により、大陸が荒れてしまい、また漢王朝では賊の平定すらままならないのが露呈してしまい、これによって諸侯の力が強まっていくのであった。
 そして、賊を平定して間もなく、一刀が劉備の事を脅威に感じる出来事が起こるのであった。


 突然沸き起こる、閧の声。何事かと一刀たちは天幕を飛び出し、急いで戦闘準備を行う。
 戦闘では賊どもを降伏させたとはいえ、終戦直後でまだまだ世の中が平穏になったとは言い難く、残党どもがどこに潜んでいるかまだまだ分からない状況である。大量の賊どもを捕縛し、その処遇をどのようにするか決めかねている最中の出来事である。
 本当なら、スパっと刑を与えるべきなのだが、劉備陣営が処刑に反対しているのだ。今回の合戦では劉備陣営と共同で戦に臨んだという事もあり、一刀の独断で全て決められる訳では無かった。立場的には将軍の一刀と無位無官の劉備では、発言力や決定力に差がありすぎるので、本来ならば劉備が一刀に対して賊の処遇の事で口出しすべきではない。
 それが、なぜこのような事になっているかといえば、劉備陣営の働きがあまりにも大きかったからである。その為、一刀は劉備側の主張を無下に出来ないでいた。確かに、兵たちは中原での戦に慣れてきて、戦力は上がった。それに加えて、風鈴を軍師として迎え入れた。とはいえ、武官では関羽や張飛のような猛将が皆無。その部分で、劉備陣営に比べると一刀の陣営は攻勢に転じた時の爆発力が欠けていた。今までのように小勢力相手ならともかく、今回のように黄巾賊の本拠地を責めるとなると、やはり他勢力の力を借りなければならなかった。そこが、一刀陣営の弱い部分である。
 しかし、捕縛した賊の数が多すぎる。いくら武装解除させたとはいえ、もし捕らえた賊が一斉に暴動を起こしたら、面倒な事になる。

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