十七 愛紗
さて、黄巾の乱も終焉となり、いよいよ洛陽の都に帰還する事になった一刀の軍。都に発つ彼らを、劉備たちが見送っていた。
一刀と劉備は当初、賊に対する考えが違う故に衝突していたのだが、このように別れの挨拶をする程度には人間関係が改善されていた。とはいえ、まだまだ両者の溝は浅くない。それは、十常侍からの使者に対する対応にも、よく現れていた。
その使者は、例の左豊という男。風鈴失脚の原因となった、あの賄賂男である。
帝(十常侍)の監察官として視察に来たその男、一刀が目立った戦果を挙げられていない事を詰り、権力を傘に来て一刀にも賄賂を要求してきたのだ。つまり、不利な報告をされたくなかったら、出すものを出せという訳である。その左豊を、一刀は斬った。
「ちょっ、何してるんですかっ!」
いくら悪人とはいえ、あっさりと左豊を斬った一刀に対して、劉備が声を荒げる。
「このような腐りきった奴、野放しに出来ないだろ?」
「だからって、こんなにあっさりと斬るなんて……」
容赦ない一刀の行動に、劉備は黙り込む。それとは対照に、関羽の方は落ち着いていたものの、それでもやはり心配そうに一刀に声をかける。
「しかし、悪人とはいえ、十常侍の使いを斬ったりしたら、後が大変ではないですか?」
「まあ、賊に襲われたように見せかけるさ」
あまりにも大胆な一刀の答えに、関羽も言葉を失う。だが、彼女は劉備と違い、一刀に対して咎める気持ちは全く無かった。
もちろん、劉備も悪人をのさばらせる事には反対である。しかし、もっと他に方法が無かったのか、と思った。劉備自身、一刀に対して当初のように色眼鏡で見ることは無くなった。それでも、一刀の悪即斬の姿勢だけは、どうしても受け入れられなかった。
このように、仲直りとまではいかないものの、当初に比べれば劉備の一刀に対する態度は少し軟化したようであった。だが、打ち解けるには、まだまだ時間がかかりそうであった。
一方で、劉備とは対照的に、関羽の方は一刀に対して好印象を抱いていた。
そもそも、関羽は劉備の下につく以前は、『黒髪の山賊狩り』として各地の賊を斬って回っていたし、その切っ掛けとなっているのが、故郷で賊に兄を殺されている事である。その為、彼女自身も劉備と同じく、賊やその元となる悪政の世をどうにかしたいという気持ちを持っているものの、賊に対する考え方そのものは一刀に近い。だから、悪役人を斬った一刀に対して、痛快な気持ちになっていた。
そんな関羽だからこそ、一刀に対する尊敬の念が芽生え、急接近するのは無理の無い事であった。そして、交流を温めていく内に、彼女はどんどん一刀に惹かれていった。そして、いよいよ一刀が都に向けて出立する前の晩に、関羽は一刀と男女の関係になるのであった。
✳✳✳✳✳
「んっ❤ んああっ❤ あぁっ……あっ、あんっ❤ あんっ❤ ああっ、一刀どのぉ……ああぁんっ❤」
優しくも力強い責めに、関羽は甘い声をあげ、喘ぎ声を漏らし続ける。世の中に、これほど素晴らしいものがあろうとは。関羽は一糸まとわぬ姿で一刀に抱かれ、すっかり虜になってしまっていた。そもそも、こうやって一刀に抱かれるまでは、男と交わった経験など皆無だったのだ。関羽が一刀の虜になってしまうのも仕方が無かった。
「愛紗、可愛い」
「ああんっ❤ そんなっ……お戯れをっ❤」
一刀に可愛いと言われ、関羽――愛紗は顔を真っ赤にする。これまで、山賊狩りとして賊を斬ってきた愛紗は、女として見られた事が無く、自分の魅力を半分も認識していない。だから、一刀の可愛いという言葉に免疫が無く、恥ずかしさに照れるばかりである。そんな彼女の唇を、一刀は優しく口づけで塞いだ。
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