ハーメルン
ホロライブラバーズ『幸福論者』獲得RTA なんでもありチャート
初戦
宙に浮かぶ少女――シオンとか言われていた子に全力で近づく。まずは射程圏内に入ることから始めなければならない。地上の相手に対して短刀は2mほどで針は25mが領域内だ。投擲は30mまで飛距離を伸ばせるが威力が大きく落ちる。それに投げる武器の重さによって距離は大きく変わる。最大25m、これが俺の活動範囲だ。しかし彼女はそこの外にいる。まず近づくことから始めなければ。
ロボ子さんは俺の後を追ってきてくれている。援護は任せていいだろう。
まずは空に浮かんでいる相手を針とロボ子さんの重火器で叩き落したい。俺の力が発揮されるのはそこからだ。短刀には対空技がないわけではない。いやむしろ得意なほうだが……。しかし目算で15mは飛んでいる。あそこまで高く飛べるわけではないのだ。
「おおっと!」
魔法が飛んでくるスピード、量、質が異常だ。魔法陣の展開による予測が無ければすでにリタイアだっただろうな。詠唱、魔法陣の展開、発動が主なプロセス。その中でも魔法陣の大きさや角度から威力、場所を推定する。それほど難しいものではない。行けるぞ。
火炎弾をさらに加速することによって置き去りにする。着弾と同時に起こる爆風に背中を焼かれながら袖口から針を一本取りだす。20m、入った。
手首のスナップだけで飛ばす。体を屈めて投げる瞬間を見せない。音もなく、視覚もできないそれは見事に相手の手に刺さる。
「いったぁぁぁぁ!?なになになに!?」
一瞬の動揺、それを確認してさらに近づく。針を取り出しては音もなく打ち出しながら歩幅を広げる。
「ナイス!ボクもやるよー!」
「わわわわ!ロボ子さん容赦なさすぎ!」
ロボ子さんも手から機関銃を出し追撃を開始する。同時に紫色のバリアを前面に出して防ぐシオンさん。どうやら効いていなさそうだ。このままでは時間だけが過ぎる硬直状態に入るだろう。しかし悲しいかなこれは二体一。俺から目を離せば大変なことになるぞ。
『隠形』を発動する。ロボ子さんを注視してバリアに夢中の彼女は俺の存在を認識できなくなるだろう。練習不足で有効時間も短いが5秒もあれば十分だ。トップスピードに入ると股下を潜り抜けて背後を取る。
背中を見てロボ子さんに夢中なのを確認するとバッグから円柱状のアイテムを取り出し地面に置く。片手で底を少し上げて傾け、先をシオンさんに向けて点火をする。ジジジ……と導火線が煙を上げてすぐに火は円柱の中に吸い込まれる。
そして――
バァン!!
花火が上がった。
大型花火式爆弾。世界の裏側に抜けるために買っておいたアイテムだ。まさか普通の使い方をすることになるとは。
天へ勢いよく上る花火はシオンさんの少し上で破裂し、爆風の波を起こす。衝撃は地面にいる俺たちにも伝わり、音が校舎のガラスを揺らす。
「ちょちょちょ!マジ!?」
魔法の飛行が乱れたのかぐるぐると旋回するのを見ながら着地地点に向けて走り出す。地面に危なげなく着地するがもう飛ぶのは許さない。指の間に挟んでおいた残りの針三本を今度は思いっきり振りかぶり、遠心力を味方につけ投げる。眉間、眼球、喉の弱点を狙ったそれはまたしてもバリアによって阻まれる。
「うっわ、えぐいとこ狙ってくる!」
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