おもちゃ戦記6
「それは……魔力によって重力に逆らっているから……ですかね? 高度を上げるほど魔力の消費が激しくなりますし」
…………。
こ れ は ひ ど い
いや本当に何でそうなった? どう考えても矛盾点だらけの仮説を、無理やり干渉式に当て嵌めているんだから、そりゃ効率も落ちまくる。触媒の質で無理やり出力を上げるなんて非効率な事が出来る訳だよ……。
大体、宝珠なんて高価な物じゃ無いんだ。おもちゃ用の宝珠は流石に安全性を考慮して高級品を使っているが、極論ガラス玉だって問題は無いんだぞ?
そもそもこの研究所に『工房』が無いのはそういう事か? そんな基礎的な事まで失ってしまったというのか?
それとも科学的な根拠が取れなかったからと、切り捨ててしまったのか? はっきり言って魔法に関する知識が素人レベルだぞ。魔法は魔法で、科学のそれとは別の理論で動いている事に何故気づかなかったんだろうか……。
「えー……。もうこの際ハッキリ言います。貴方がたが使ってきた干渉式については全て忘れて下さい。ぶっちゃけゴミです。使う価値がありません」
「……そ、そこまで酷いのですか?」
「そりゃもう。魔導士の方々に土下座して謝った方がいいかもしれませんね。大体、これは戦闘用なのでしょう? 少しのミスが生死に関わる中、こんな物を押し付けられたら普通は叩き返しますよ」
あたりがシンと静まり返る。だけど止まるつもりは無い。こんな状況を良しとして、使えもしない宝珠を本気で研究してきたなんて、あまりにも杜撰過ぎる。
宝珠とは演算機である前に魔法の触媒なのだ。そこに潜むのは紀元前から綿々と受け継がれてきた魔導の真奥。それを忘れて作った物など、妖精の悪戯にも劣る。
「まずは干渉式云々ではなく、基礎的な事から始めましょうか。
この工廠で働く技師はここにいる人で全員ですか?」
「はい。就任式ですので」
「各人適当に座る物なり、メモ用紙を取りに行く時間を与えます。その後は……まぁちょっとした講義を行いましょう。それでいいですかね? 副主任」
「了解です」
──────
……さて、皆さん集まりましたか? 質問は随時受け付けましょう。
まずは『魔力』について、です。
そも魔力とは、体質やらに関係なく、その人個人が持つ『魂』に起因するエネルギーです。この世界とは別の世界……アストラル界だとか幽界だとか言ったりしますが、ここよりも高次元に位置する場所にある、強い力の事を指します。
魂に大小はありません。象も蟻も同じ魂の容量を持ちます。問題はその魂の『位置』にあるのです。
こちらとあちらでは、物体の在り方が明確に違います。あちら側には距離だとか重さだとか、三次元的な法則は全く機能しておらず、思念や意思などの、『明確に不安定な』力をもろに受けるのです。
魂はそんな力の大小で、こちらとあちらの位置がズレます。こちら側に魂が近いほど、引き出せる魔力は大きくなり、遠ければ小さくなるのです。
『その理論だと、誰しもが魔力を持っている事になる』ですか?
その通りです。我等は皆魔力を持っています。私も、当然ながら貴方も、です。訓練や学習によって魔導に関われば関わるほど、使える魔力も大きくなっていきます。
[9]前 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:2/7
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク