ハーメルン
おもちゃ戦記
おもちゃ戦記7

「…副主任……今日で何日目ですかね?」
「…………神が死んだ日では…?」
「……そうですか……え、今なんて?」
「7日目ですよ副主任……もういい加減休みましょう? ポトフ技師がポトフを煮込む前に……」
「そうですね…もう毎食のポトフは懲り懲りです……」
「ポトフ!」
「しまった! 遅かった! 誰かポトフ技師を止めろ!」
「あいつ6徹目なのになんであんな元気なんだ!」


 4徹目辺りで禁書を解読したのが不味かったのでは? …多分正気度を維持する為に、本能で正気を回復させる行為を行なっているのではないだろうか。でも何故にポトフ。

 しかし強行軍をした効果はあった。魔術の基礎を一週間で詰め込みつつ、宝珠の改良を行う…。難しい問題ではあったが、なんとか期限内に終わった。

 後は軍の人間を前にデモンストレーションをするだけだ。…結局、試運転らしい試運転が出来なかったのが心残りである。


「…はぁ。これは昼食もポトフですね…。軍の方はいつ来られる予定でしたっけ?」
「確か午後の初め辺りだったかと。…いや、本当にすいません。私が安請け合いしてしまったばっかりに……」
「…まぁ、これから気を付けて頂ければ構いませんよ。今回は私たちも得るものがありましたし……」


 そうなのである。このイカれた強行軍は、俺が原因なのだ。本当に申し訳ない。

 入って1日目で、早速持ちかけられた仕事…。それは量産型宝珠の製作。今までの宝珠を一新する、より性能の高い物を求められたのである。

 そこで設けられた期間は3ヶ月の予定だった。しかし当時の俺は宝珠を作るだけでそんなに掛かるとは到底思えず、1週間で出来ると豪語してしまったのである。

 普通ならそんな話は通らないらしいのだが、コチラにはデグレチャフ少尉の持つエレニウム95式を一週間そこそこで複製した実績があり、アッサリと通ってしまったのだ。

 その事を副主任達に話した時の阿鼻叫喚っぷりは筆舌に尽くし難いものだった。

 当たり前と言えば当たり前なのだけども、軍用の宝珠は民間の物と比べて厳格なデータと実績が必要になる。とりあえずスペックと安定性があって、試験を通ればいい民間のそれとは格が違ったのだ。

 特に俺の場合、皇室からの許可書もあるので、オーダーメイドの特注品を作るのも珍しくない。その経験が仇となった。

 更に今までの干渉式を一新した上で、攻撃性の高い新たな干渉式の構築、その干渉式のデータ収集。飛行干渉式の根本からの見直し、そしてそのデータ収集。生命維持干渉式の構築、そのデータ収集…。

 更にデータをレポートにまとめ上げ、新規の干渉式が一体どういう物なのかを事細かに記さなければならず、それも全て一から書かなければならなかった。

 この手の仕事に慣れた職員達が居なければ、軽く1ヶ月はかかっていたと思う。…あれ? この人たち優秀過ぎない…? このクソ忙しい中で、不慣れだろうとデモンストレーションの原稿まで作ってくれたし…。

 しかも知識の吸収力が半端ない。流石に一朝一夕で身につかない技術もあるけど、それを差し引いても新しい理論を即座に技術に反映できていたし…。

 おかげで簡単な基礎なら任せられるくらいにはなっていた。俺なんか半年かかったんだけどなぁ…。

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