第一話「リクの妹」Cパート
「現れたな、ウルトラマンジード!」
どこか小馬鹿にしたように、星山市上空に浮遊したままのエタルガーが、ウルトラマンジードの出現を喜んだ。
「エタルガー、望み通り、僕は来たぞ! もうこの街に手を出すな!」
「そうはいかん。人間の信じるウルトラマン……その光を穢すという、我が戦友たちの悲願のため、この星にも犠牲となって貰う」
どうやら、ウルトラダークキラーら、闇の巨人たちの遺志をも汲んで、エタルガーはウルトラマンへの挑戦を望んでいるらしい。
だが、仲間内だけの情のために、無関係な人々を徒に傷つけるなんて理不尽を、ジードは許せなかった。
「まずは余興を完遂させて貰おう。おまえの力を見せてみろ、ウルトラマンジード!」
上空に待機するエタルガーが告げるが否や、エタルダミー=スカルゴモラはその意志のまま、ウルトラマンジードに向けて突進を開始した。
「ハッ!」
大地を揺らす進撃に対し、ジードは空を飛んで立ち向かった。
跳躍と同時、人類――そして、朝倉リクにも原理の理解は及ばぬまま、本能的にウルトラマンとして備える、生身での飛行能力を発動。瞬時に音速にまで加速された五万一千トンの質量が、そのままスカルゴモラに激突する。
人類が観測し得る他の事象であれば、必ず発生するエネルギーの転化分散が極端に抑えられた、ウルトラマンの打撃。咄嗟に放たれただけのそれでも、たった一平米程度の着弾点に、広島型原発の一割ほどのエネルギーが集中し、自由な射角で怪獣の肉体だけを打ちのめすという、人類の兵器では実現不可能な一撃だ。
単なる威力でもバンカーバスターさえ凌駕するその一撃は確かに、スカルゴモラの進撃を一歩、止めることに成功した。
だが、全開まで加速できなかった一撃で止められたのはその、たったの一歩分だけだった。
傷跡の一つも残らず。体格でジードを上回るスカルゴモラは、飛び膝蹴りを受けたダメージなど一切なかったかのように再び進撃し、雷鳴のような咆哮とともに逞しい上腕を薙ぎ払う。
その場に留まらず、後方転回しながら距離を取ったジードは、スカルゴモラの豪腕を掻い潜ると同時、追撃として全身から放たれていた超振動波の射程からも逃れていた。
ウルトラマンジードが二種類のウルトラマンの特性をかけ合わせて戦闘形態を獲得するように、ベリアル融合獣もまた、二種類の怪獣の形質を組み合わせて生み出された怪獣兵器だ。
スカルゴモラは髑髏怪獣レッドキングと古代怪獣ゴモラの性質を併せ持つ融合獣。この原種の内、ゴモラが地底を掘削するのに使うのが、超振動波という現象だ。
ゴモラは頭部の二本角からあらゆる周波数の音を放射し、その反射の有無で対象の性質を把握。吸収され易い周波数を再照射することで、対象を激しく振動させ、発熱、気化させるというプロセスで地質を蒸発させ、地底を移動するという生態を持つ。
そしてスカルゴモラの場合は、その音叉となる角が七倍に増設され、全方位に超振動波現象を引き起こすことができるのだ。
投射先を絞っていない場合、有効な距離こそ短くなるが、それでも一瞬で地盤を蒸発させてしまうような破壊力を全方位に、体力の限りに放ち続けることができる。その膨大な体力によるタフネス、ジードを遥かに上回る腕力のみならず、この恐るべき特殊能力まで備えた怪獣がこれ以上街を蹂躙することがないよう、防衛戦を展開しなければならない。
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