第4話 目指すは虫けらの街
私の名前はナーベラル・ガンマ。
現在はモモンガ様とともに冒険者ナーベとして王都リ・エスティーゼへ侵入を果たしている。
虫けらの街へ向かうに当たってモモンガ様は我々の名前を変えることになされた。他のプレイヤー達を警戒してのアンダーカバーとして動くとのことだ。そこで新たに賜ったのが冒険者ナーベという名前だ。モモンガ様はモモン様と名乗るらしい。
本心を言えば虫けらたちなど気にせずに皆殺しにしてしまえばよいと思う。先日もモモンガ様との逢瀬を邪魔され、怒りに任せて虫けらを殺そうとしたのだがモモンガ様は虫けらにさえ温情を与える慈悲深き御方。
あの虫けらを許してしまわれた。なんと慈悲深いことだろう。
しかしだからと言って虫けらごときがモモンガ様に近づくなどおこがましいにもほどがある。
王都へ向かうことしばらくその入り口には鎧を着た虫けらがおり、街の中に入るとそこにもあそこにも虫けらだらけだ。
「美しい……貴族……いや、王族か?」
「どこの国の姫だ……?」
「いや、恰好からして冒険者……?」
「それにしても美しい……おい、ちょっと声かけてみろよ」
虫けらたちが我々を見て囀っている。この街には虫けらしかいないだろうか。きょろきょろと周りを見回していると一匹の虫けらが近づいてきた。
「君この街ははじめてかい?どこから来たの?もしよかったら俺が街を案内してやろうか?へへっ」
酒臭い息を吐きかけながら私の体に触れようとする虫けら。それもモモンガ様から触れていたただいた胸に手を伸ばしてきた。万死に値する。
魔法で焼き殺してやりたい衝動にかられるもモモンガ様から出来るだけ殺すなとの厳命を受けている身だ。
モモンガ様の命令は絶対。そのため私は虫けらを相手にすることなく……。
そのまま避けることなくその足を踏み潰した。
ポキポキという心地の良い音がする。虫けらにしては上出来の踏み心地だろう。
「うぎゃああああああああ!あ、足がああああああああああああ」
虫けらは転げまわりながら道の端で蹲る。それを見た他の虫けらどもも道を開けた。最初からそうしていればいいものを手間をかけさせてくれる。
「さぁ、モモンガ様。道が空いたようです。どうぞお通りください」
「あー、ナーベ。ちょーっとこっちに来ようか!」
モモンガ様が私の手を引いて路地へと引っ張られる。何かご不快にするようなことでもしてしまったのだろうか。やはりあの程度の罰では生ぬるかっただろうか。
「ナーベ。私が何を言いたいか分かるか?」
その声からは不満の様子を感じ取れる。やはり何か不手際を犯したのだろう。そこでモモンガ様からの命令を思い出す。『出来るだけ』殺さないように。なるほど……。
「モモンガ様。やはり今の虫けらは殺した方がよろしかったのですね!」
「違う!そうじゃない!聞かせてくれナーベ。なぜあの男の足をつぶした?それから私のことはモモンと呼ぶように」
「失礼しました、モモン様。あの虫けらですがモモン様の行く道をふさいでおりました」
「そ、それだけ?」
「いえ、それからこれはモモン様には取るに足らないことでしょうがあの男は私の胸に手を伸ばし触れようと……」
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