第6話 冒険者ナーベの旅立ち
私の名前はナーベラル・ガンマ……いえ、今は冒険者となるべく冒険者組合に向かっている人間の女ナーベ、ということになっている。
モモンガ様より単独任務を仰せつかり、その栄誉はとても喜ばしいと感じるもののモモンガ様はお一人で行動されている。
何かお困りのことはないだろうか、また私の胸を揉みたいと思っていただいたりしていないだろうか。心配で仕方がなかった。
モモンガ様に治癒せよと命じられた虫けらの捕虜は命令通り指輪に込められた<大治癒>で治癒を施し解放してきた。何やら礼をしたいと言っていたがそれならばその不快な囀りをやめて消えさればいいと思う。
とは言え、虫けらの相手より冒険者組合へ向かう方が大切だと気を取り直したのだが……。
「ここはどこ……?」
虫けらを開放するため大通りを外れたことで道順が分からなくなってしまった。このままではモモンガ様からの任務を達成できない。
小汚く狭い道を歩きながら大きい通りへと通じる道を探す。すると前方の道をまた虫けらが塞いでいた。本当に虫けらが多い街だ。
「いやぁあああ!離してえええ」
「ちょっとお。さっさと黙らせなさいよ。最近は変な冒険者のせいで奴隷狩りにうるさくなっちゃってるんだから。誰かに見られるわけにもいかないのよ、やんなっちゃうわね」
「へい!コッコドールの旦那。おい……黙れ、おらぁ!」
虫けらの男が虫けらの女をガツンと殴り猿轡をはめている。
周りを見ると同じように猿轡を嵌められた虫けらの女たちが地面に転がされていた。
私の歩く先を遮っているのはそれらを行っている全身が筋肉で覆われている5人ほどの虫けらたちだ。
「どきなさい」
早く冒険者組合に行かなければならないのに……。目の前の集団にそう命じると虫けらの一人がこちらに気づいたようだ。
「あ?なんだてめぇは?」
「すげぇ……美人だな」
「ついでにこいつも捕まえちますかい?コッコドールの旦那」
どうやら道を譲る気はないらしい。仕方がないのでその虫けらの手を捩じってやるとポキポキと小気味の良い音がする。そしてそのまま後方へと放り投げ飛ばしててやった。
「ぐぎゃあああああ」
「邪魔よ」
それを繰り返すこと5回。デカい虫を駆除してやっと通れる道が出来た。
「あ、あなたまさか噂の冒険者組合から依頼された……?ひぃぃ!」
その中のリーダーらしき虫けらの男は背を向けて逃げていった。しかしわざわざ追いかけてまで虫を踏み潰す趣味はない。
「あ、あの……ありがとうございます……お名前を教えていただけますか」
捕まりそうになっていた虫けらが礼を言ってくるがまったくもって煩わしい。ふんと鼻を鳴らしてその場を立ち去ろうとすると後方からさらに二人の虫けらが現れる。
「なんだこりゃ?俺らが来る前に終わってんじゃねえか、ラキュース」
「そのようね、ガガーラン」
派手な装備に身を包んだ10代と思われる少女と屈強な肉体をもった男のような女。モモンガ様の創造したアンデッドから報告のあった虫けらの中では強いと言っていた冒険者だろうか。
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