ハーメルン
転生したらTSして翼生えてて、おまけに実験体だった
12話 奴隷と書いてモルモットと読む
○月×日
あの事件から早二か月。新しい環境にも慣れてきたので、ぼちぼちまた日記を付けてみたいと思う。
ではまず、気になる近況報告から……。
死闘の末、ゲマに敗れた俺たちはヤツに捕らえられ、光の教団の本部・セントベレス山(標高8000メートル超)の頂上へ連行されてしまった。
そこで奴の宣言通り、リュカは労働系奴隷として大神殿の建設に……。そして俺は、あいつが主導する妙な実験のモルモットとして、いろいろな作業に従事させられることになったのだ。
聞くところによると、俺は『伝説の勇者』という、過去に世界を救った凄い人と同じ力を持っているらしい。あの雷撃の魔法――『ライデイン』を撃ったのがその証拠なんだとゲマは言っていた。
数百年前、あの魔法を意のままに操った当時の勇者は、世界を支配しようと企む“デスなんとか”という魔王を倒し、魔族の軍勢から人類を救ったんだとか……。
俺の“あの状態”を揺り起こして解析することで、その勇者の力を丸裸にし、あわよくば再現して利用できないか?――というのが、あいつの狙いらしい。眉唾でない本物の勇者の力は初めて見たため、かなり興奮したんだとさ。
………………。
……まあ、そんなん聞かされても、こっちとしては『ほーん……?』としか言えないんだけどね?
自分で努力して得た力でもないし、偉そうに誇れるようなものじゃない。むしろ、あのマッドどもに与えられた力だと思うと、『さっさと捨ててやりたい!』って気持ちの方が大きかった。
これのせいでまた実験材料にされちまうし……、ホンット碌なことしねえな、あいつら。
○月□日
今日も今日とて実験三昧。
装置に繋がれて魔力を流されたり、そのデータを検証したり、研究所時代のことを聞き取りされたり、軽く魔物と戦ってみたり……等々、目も回るような忙しさである。
……ただ、意外なことなんだけど、作業そのものは結構余裕なものばかりだった。
てっきりあの研究所の連中みたいに、限界ギリギリ過酷プレイを要求されると思っていたのに、身体へのダメージはほとんどない実験ばかり。
人間より魔族の方が人道的とはこれ如何に?
そこんところ気になってゲマに尋ねてみると、
曰く――『貴重なサンプルなのですから、簡単に壊すがわけないでしょう? 成長の過程も見たいですし、命を削るのはもっと後です』……だって。
……Oh。やっぱり魔族は魔族だった。人道うんぬんじゃなくて、冷静に素材として見ているだけだったよ……。
まあ、現状それで命が繋がっているのだから文句も言えないけど。希少な人材ということで、奴隷なのに個室まで与えられているし。
あのゲマに感謝するのは癪だが、正直、これはかなりありがたかった。幼いリュカを奴隷の大部屋に放り込んだら何されるか分からなかったし、毎日いっしょに寝てやれるのはかなり助かる。
……あの事件以降、『自分のせいで父さんがあんなことになった』と落ち込んでいる風だから、しばらくは付きっきりでケアしてやる必要があった。
悪いのは全部ゲマたちなのに、リュカのやつ、『自分が弱かったから』って自責の念にかられているのだ。このままトラウマになってしまう前に、なんとか解消してやらないと。
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