ハーメルン
転生したらTSして翼生えてて、おまけに実験体だった
4話 幽霊退治と乙女心
○月×日
ただ今、アルカパの町にて滞在中。
ビアンカたちの帰路に護衛として同行し、ついでに病気のダンカンさん(ビアンカ父)のお見舞いに伺ったところである。
……とはいえ、俺もリュカもダンカンさんと会うのは初めてなので、主に話していたのは父さんと女将さん。自己紹介が済んだ後は『子どもは外で遊んでおいで』と言われ、夕飯の時間まで町の中をブラつくことになった。
案内役はもちろんビアンカ。
仲直りできて以降、彼女は俺によく懐いてくれており、リュカと俺の手を引いていろんな観光スポットを見せてくれた。最近は恋人をゲットすることに躍起になっていたが、偶にはこういうほのぼのした時間も良いもんです。
そういえばサンタローズに移住してから、他の町に来るのはこれが初めてになるのか。普段は魔物退治やナンパや、家でダラダラしたりで忙しくて、満足にお出かけする機会もなかったからなぁ。
今世での初めての家族旅行、この際思いっきり羽を伸ばして楽しむことにしよう!
ちなみに、本人たっての希望でビアンカのことは呼び捨てになった。
代わりに俺への『お姉様』呼びも、なんとか名前呼びに変更してもらったけど。
……うん、さすがにね、……『お姉様』呼びは、ちょっとね?
○月△日
……わかっていた。
俺が幸福や平穏を感じたときってのは、だいたい次の騒動への準備期間なんだってこと……。俺にはとっくにわかってたとも。
今日も今日とて我々は、仲良く町中を散策していた。
――が、そこへどこからともなくブーメランが飛来して俺のオデコにHIT! 頭を抱えて痛みに呻いていると、ガヤガヤと騒がしい集団がやって来た。彼らはアルカパに暮らす少年のグループで、ブーメランで遊んでいたらミスって暴投してしまったらしい。
……まあ、それくらいなら俺も別に怒らない。一応は謝っていたし、子どものやったことに一々目くじら立てるのも大人げないし。
だがそれに我慢ならなかったのが、我らがビアンカ嬢である。彼女はリーダー格の少年の胸倉を掴み上げると、『お姉様に何してくれてんのよッ!?』と凄い剣幕で捲し立てた。
どっちが悪役か分からないほどの迫力だった。……俺もビビった。
聞くところによると、彼らとビアンカは以前から折り合いが悪かったらしく、いつもいつも一方的にちょっかいを掛けられて、『もー、男子やだー!』って感じだったんだと。
『ああ……これ多分、気になる女の子につい意地悪しちゃうアレだろうなー』
――と、俺としてはむしろ微笑ましい気持ちになったのだが、事はそう平和的に終わらなかった。
涙目になった少年は形勢を逆転したかったのか、それともカッコいい(?)ところでも見せたかったのか……、仲間に命じて一匹の仔猫を連れて来させ、そいつをいじめ始めたのだ。
彼らはこの仔を小突いて遊んでいたらしく、それをビアンカに見せて自慢したかったらしい。
………………。
悪手である。完全に裏目である。
まともな感性の女子が動物虐待を見せられて、『きゃー、カッコいいー!』なんて喜ぶわけがないだろ。……正直、俺もちょっとイラっとしたし。
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