ハーメルン
リィンカーネーションダービー ‐新人トレーナーがんばる‐
第2話:新人トレーナー、何かがおかしいと気付く
ハルウララの担当トレーナーになった日の翌日。
俺は授業を終えたハルウララと合流し、早速育成に取りかかっていた。
午前中の内に理事長と駿川さんに呼び出された時は一体何事かと思ったが、ハルウララを育成すると断言して退室してきた。
二人とも何か言いたげだったが、前途有望なハルウララと引き離そうとしてもそうはいかない。新人トレーナーの俺ではなくベテランのトレーナーに任せたかったのかもしれないが、俺が望み、ハルウララも応えてくれたのだ。
新人の俺にはトレーナーとしてのプライドなどと呼べるものはないが、引き受けてくれたハルウララを別のトレーナーに任せるつもりなど毛頭なかった。
「よし、それじゃあ早速トレーニングに入る……といいたいところだけど、ハルウララ!」
「うんっ! なになに?」
「まずは君にテストを受けてもらう!」
ジャージに着替えた俺はハルウララの前でそう宣言する。すると、俺と同じくジャージ姿のハルウララは耳をへにょりと倒して首を傾げた。
「て、てすと? わたし、勉強は苦手だよー?」
そう言って自信なさげに尻尾をへたらせるハルウララ。それを見た俺は苦笑すると、用意していた備品のストップウォッチを見せる。
「テストっていっても勉強のテストじゃないさ。お前さんがどれだけ走れるか確認したいってだけだよ」
ウマ娘と一口に言っても、その適性や能力は千差万別である。
ウマ娘が参加するレースでは距離によって短距離、マイル、中距離、長距離という分類がされており、レースによって求められる適性と能力が大きく異なる。
短距離走が得意なスプリンター。
マイル走が得意なマイラー。
中距離走が得意なミドルディスタンス。
長距離走が得意なステイヤー。
中にはどんな距離でも走れるオールラウンダーも存在するが、それは非常に稀だ。
さらに、ウマ娘にはそれぞれが得意とする走り方も存在する。
レースのスタートと同時に先頭を取り、そのままゴールまで駆け抜ける逃げ。大逃げや溜め逃げという分け方もあるが、基本的には逃げと表現して問題ないだろう。
逃げよりも後方に位置するが全体で見れば前方につき、隙あらば逃げるウマ娘を抜き去る先行。
バ群の中団ややや後方に位置しながら駆け、レース終盤に最終コーナー辺りから加速して前のウマ娘を抜き去る差し。
レースの終盤まで最後方に待機し、最終直線辺りでバ群の大外から一気に抜き去る追い込み。
基本的にこの四つの中から自分に合った走り方を選び、レースに挑むことになる。
得意な距離を得意な戦法で走ることでウマ娘は力を発揮しやすくなるが、他のウマ娘にブロックされたり、マークされたり、状況によってはぶつかられたりすることもある。
出走する他のウマ娘やバ場、天候といった要素も重要だが、まずはハルウララがどんなウマ娘かを知ることが最重要なのだ。それによって今後の育成方針や出走するレースを決めていくことになる。
「……とまあ、こんな感じでな。お前さんがどんなウマ娘かを知るためのテストだ」
俺が説明をすると、ハルウララはぽかんとした顔になった。しかしすぐに笑顔になると、はしゃぐようにしてその場で飛び跳ねる。
[9]前話
[1]次
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:1/6
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク