2053年:新宿
『チカラをやろう』
『おまえの・・・・・・と引き換え・・・・・・守るチカラを・・・・・・』
「・・・・・・・・・・・・んぅ・・・・・・?」
■
ドナと一緒に寝たと思ったら日本の新宿らしき場所に居た件。
はいはい異世界異世界。流石に目覚めたら違う世界に居ることももう慣れた。
どうして異世界だと分かったかって?周りの建物が何処も崩れてるからだよ。日本語が書かれた看板が散乱している。まるで大地震に見舞われたみたいだ。
アタシは昨夜も配信してたが、日本で大災害が起こったなんてニュースは聞いてない。流石にアタシが眠ってる間の数時間でここまで広範囲が崩壊することはあり得ないはずだ。ここは平行世界か何かか?
遠くの高層ビル群の隙間から東京タワーが見える。アタシの生前の記憶にあるものと同じ『赤』の塔だ。
「というか、さっきの渋いオジサマの声は何だったんだ?幻聴かな・・・・・・」
確かチカラがどうとか言ってたけど・・・・・・
とりあえずこのあたりを探索しようと周囲を見渡すと、アタシの足元に1冊の本が落ちていることに気付いた。
奇妙な本だ。『拾い上げて』パラパラとページをめくってみる。黒の分厚い表紙、黒のページ、白の見たことのない文字。表紙や背表紙に銀の装飾が施されている。これは顔だろうか?
「それにしてもブサイクな顔の装飾だなぁ。アタシの方が何倍も可愛いよ」
『・・・・・・見つけた』
「は?」
アタシが確認できたのはそこまでだった。
持っていた本が光り輝き、アタシを光が飲み込む。思わず目を瞑るとさっきの声が聞こえる。
『貴方は選ばれたのです。『王』よ』
「!?・・・・・・オマエは誰だ?何がどうなってる!?」
『我が名は『黒の書』。貴方が、この世界を救済へと導く王となる御方か』
「いや、まったく身に覚えがないんだが・・・・・・」
何なんだコイツ・・・・・・?いや、黒の『書』だって?もしかしてこの本が喋っているのか!?
『何、そう驚かれますな。王よ。人間の言葉を扱うことなど、我にとっては容易いこと』
「・・・・・・まあ、よく考えたらアタシも無機物だし、そう珍しいことでもないのか・・・・・・?」
『貴方は奇妙な御方だ。人間の魂が人形に宿っているとは』
「!・・・・・・分かるのか?」
『ええ。ですが器は関係ありません。魂が人間のものであれば、我の起動条件を満たすことが出来ますので』
「そもそもオマエは何者なんだ?目的は?」
『その前に、貴方のお姿を確認した方がよろしいかと』
「え?」
いつの間にか光は収まっていた。慌てて近くにあった割れたカーブミラーで自分の姿を確認すると、そこには『人間』が立っていた。
常に濡れそぼっているかのように艶やかな黒い髪、熱を感じさせない灰色の肌、黒い眼球と黄金に輝く瞳。人形の時と同じ太陽と月の顔。人間離れした、それでいて途方も無く美しい姿だ。
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