15・嫌な予感ほど外れない
※端っから他者視点いくぜェ
プラントを発ったラクス一行は、途中小惑星を加工した前線基地へと立ち寄り、降下輸送船に乗り換え地球へと向かっていた。
降下輸送船とは、まあ言ってみればでっかいスペースシャトルである。宇宙と地上を行き来し、物資を安定して輸送するための物だ。地上に物資を降ろすだけならHLV(重量物打ち上げロケット。この場合は降下カプセルも兼ねている)と言う物もあるが、一度に輸送できる重量は200トンに満たない。ゆえにできるだけ少ない回数で多くの物資をと考案されたのが降下輸送船であった。
まあコストとか色々な面でHLVより秀でているかと言えば微妙なところだが、ラクスの護衛であるヴェステンフルス隊の装備と、その他諸々の物資を一気に纏めて運べるというのは確かに便利である。さらに言えば、乗り心地はHLVと比べものにならない。要人を地球へ降ろすのに都合がよいのは間違いなかった。
「すまねえな副長、貧乏くじ引かせて」
「これもお役目です。むしろ隊長の方が苦労されるでしょう」
モニター越しに言葉を交わすハイネとアデス。地上に降りるのはヴェステンフルス隊の中でもハイネ直下のMS部隊と整備兵だけで、アデスたちはヴェサリウス、ガモフ共々宇宙に残る。
ヴェサリウスとガモフは地球近海までの護衛だ。シーゲルら上層部としてはもっと多くの戦力を付けたかっただろうが、予断を許さない状況の中、割ける戦力には限度がある。それに大部隊は目立ち、行動が鈍る。お忍びというわけではないが、わざわざ要人が動くと宣伝してやるいわれもない。最終的にはエースが率いているんだしこのくらいが妥当だろうという結論に落ち着いた。
「にしても副長、俺の方が年下なんだから、もっとざっくばらんでいいんだぜ?」
「けじめですので」
気軽な人間関係を好むハイネと、堅物のアデスはそりが合わない……と思わせておいて、結構上手くやっていた。
これはハイネが軽薄に見えて気配りの利いた人物であることが大きい。有能であるが何を考えているか分からないところがあり、ちょくちょく無茶振りをするクルーゼと比べて、非常に人間が出来ている。アデスからしても仕事がしやすい上司であった。
ハイネにとってもアデスはできた副官である。実直で堅実。冒険はしないタイプだが、その分定石の行動に関しては非常に優秀だ。そして元々同じ部隊に属していただけあって、赤服の少年たちの扱いを心得ている。自分のサポート役としては上々の人間であった。
まあ堅物で、どれだけ言っても歳下どころではない若輩者の自分に、慇懃な接し方をしてくるのは玉に瑕であるが。
「……まあそれはおいおい解決するとして、そろそろ地球近海だ。ザフトが制空権取ってる空域から地球に降りるが、余計な邪魔が入る可能性はゼロじゃないからな。最後まで油断しないでおこう」
「大気圏突入前、降下軌道付近での戦闘は自殺行為に等しいと思いますが、仕掛けてくる可能性があると?」
「ないとは言えないな。何しろ名高きザフトの歌姫だ。それを仕留める、あるいは手中にする機会ともなれば、かなりの無茶でもやりかねん」
正式な交戦協定などはないが、地球への降下軌道上での戦闘はタブーとされている。当然の話で危険極まりないからだ。メタな話ガンダムではよくやることであるが、本来自殺行為と言っても過言ではない。
だがハイネはその可能性があると考えていた。連合、特に大西洋連邦を牛耳っているブルーコスモスはまともじゃない。必要とあらばいかなる犠牲を払ってでも目的を果たそうとするだろう。死兵を送り込んでくるくらい平気でやる。
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