ハーメルン
Fate/GRAND Zi-Order ーRemnant of Chronicleー
Mのキッチン1999

 
 
 
「わん! わん! わふっ」

「うむ。番犬ご苦労、カヴァスⅡ世」

 ファーストフード店の地下にある倉庫。
 そこに踏み込むと同時、白い犬が駆け出してくる。
 それを受け止め、撫で回し、セイバーはそう言った。

「わっ、かわいい……!」

 イリヤが漏らした声にちらりと視線を向け、セイバーが犬をそちらに放す。
 人懐こい様子の犬は、そのままイリヤに飛び掛かった。
 犬にくっつかれて奇声を上げる少女。
 それから視線を逸らし、セイバーは奥へと踏み込んでいく。

『バーガーショップの地下……倉庫? ここを根城にしているのかい?』

「ああ。丁度いいだろう」

 ロマニからの問いにそう返し、セイバーは冷凍庫を示す。
 彼女から視線を向けられて、立香とツクヨミが顔を見合わせた。
 揃って、真っ先に近くの椅子に座ってテーブルに突っ伏したソウゴを見る。

 先に使用したディケイドアーマードライブフォーム。
 その力で高速戦闘を長時間行った反動はけして軽くなかったらしい。

「まあ、そうね。食事しないわけにもいかないし」

「上の店の方じゃないと調理できない、のかな?」

「電気……は大丈夫。ガスと水道ってちゃんと来てるのかしら」

 冷凍庫を開けてみて、動いている事を確認するツクヨミ。
 彼女が適当に引っ張り出す冷凍された商品を受け取り、立香が天井を見上げる。
 食事するなら地上の店舗で直接の方がいいかもしれない、と。

「でしたら、全員で上に上がった方がいいかと。
 アサシンが忍んでこないとも限りませんので」

「うん。なら、先に最低限掃除してこよう」

 そう言って、犬と戯れるイリヤとクロエをちらりと見つつ。
 美遊はサファイアと共に踵を返す。

 それにハッとして、イリヤがカヴァスⅡ世から手を離した。
 どうしたの? とばかりに見上げてくる白い犬から視線を引き剥がし、彼女も立ち上がる。
 代わりに両手で犬の毛をわしゃわしゃとかき回すクロエ。

 そっちに後ろ髪を引かれつつ、イリヤは美遊を追いかけた。

「ちょ、ちょっと待って! わたしも手伝うから!」

「イリヤは休んでいていい。さっきの戦いでイリヤとソウゴさんは明らかに無理をしてたから」

 全力でぐったりしているソウゴを見つつ、そういう美遊。
 それは、疲れただろうから休ませてあげよう―――なんて親切心ではない。
 もちろんそういう気持ちがないわけではないが。

 ごく単純な問題だ。
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