ハーメルン
Fate/GRAND Zi-Order ーRemnant of Chronicleー
弾丸ロスト1999
「―――配置、完了しました」
「そうか。まあ、適当にやっておけ。貴様たちなぞいてもいなくても変わらん」
敬礼してみせる黄色いフルフェイス。
その後ろにはまったく同じ装備の人間が百人以上。
彼らこそが幻影魔人同盟の兵隊、雀蜂。
もっとも彼らはとうに存在の目的を完了している。
彼らはシェイクスピアの世界観がある程度進むまでの間に合わせだ。
怪物が跋扈するようになった今の世界で、彼らを必要などしていない。
彼らに対し鬱陶しげに返し、アーチャーは周囲のビルを見渡した。
文句もなく仕事に戻っていく雀蜂。
さっさと薙ぎ払われるだろうが、ただの人間だからこそ殺されもしないだろう。
いっそ纏めて殺されてくれた方が彼としては楽なのだが。
「―――――」
雀蜂は彼に対して与えられた枷だ。
片目を瞑り、思考に耽る。
この世界では勝者と敗者が明確に線引きされる。
突破方法こそあるが、彼はその方法を行使することはできない。
そして彼は“負けた後に動く者”と定義されたもの。
彼が自分の目的を優先して動く時、そこには“間に合わなかった”という事実が生じる。彼が彼の目的を以てモリアーティと敵対した場合、“モリアーティは目的を果たせた”ことになる。
―――こうなる前に動かねばならなかった、と今更考えてももう遅い。
これこそ常に間に合わない男の面目躍如、というワケだ。
だからモリアーティは彼という駒を自由に動かせる。
モリアーティの目的と彼の目的は決して噛み合わない。
実際には敵対関係なのだから当たり前だ。
敵対関係が確定している上で、彼がモリアーティに敵対してはいけない状況。
だから裏切りの余地などない。
裏切られたら、それはそれでモリアーティの得になるようになっている。
「……問題はカルデアがどこまで掴んでいるか、だが」
この世界はもう強い弱いで語る世界ではない。
勝利の要因と敗北の要因だけを天秤に乗せた、事務的な計算だけが勝敗を決める。
そうするために、あの魔人どもは全てを重ね上げてきた。
基礎から丁寧に、丹念に、この都市を築いてきた。
求めた最後の一瞬のためだけに、此処に至るために全てを懸けてきた。
だから、奇蹟の逆転の可能性など残されてはいない。
「―――まぁ、どうあれ仕事がいつも通り後始末になるだけか。
掃除屋の特性まで利用されては、こちらとしてはどうしようもない。
抑止の仕組みから完全に攻略されていた、というだけのこと。
撃たれた弾丸如きが気を揉んでどうにかなるような話でもない」
そう呟いてくつくつと嗤い、アーチャーが肩を震わせる。
すると、そこで彼の前で整列していた雀蜂の一人が声を上げた。
「ダイヤ4から通信。こちらに向かうバイクらしきエンジン音を確認」
「なに? 奴のバイクは既に撃ち抜いたはず。騎士王の魔力に耐えるバイクなどそうは―――
いや、仮面ライダーの装備にあったな。ならばそれか。
……正面はオレが備える。スペードは左、クローバーは右に展開しろ」
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