ハーメルン
Fate/GRAND Zi-Order ーRemnant of Chronicleー
絶望VS希望1431


 ここに召喚サークルなどなく。ここにカルデアの天才などおらず。
 そんな仕組みはどこにもない。
 だが代わりに、霊基を混ぜられる世界観が構築されている。
 それでも普通なら不可能だろう。そんな簡単にいくものじゃない。

 ―――だが、しかし。
 この悪逆の街に、絶望と後悔に満ちた演奏が響く中。
 暗黒の底に墜ちながらも、確かに。
 此処にはこうして、眩く輝く一条の希望を齎す言葉がある―――!

「“待て、しかして希望せよ(アトンドリ・エスペリエ)”、だ――――!!」




 ―――アスファルトが裂ける。
 巨大演奏装置、ファントム・ジ・オペラ。
 それが足場を揺らされ、僅かに怯む。

 直後に道路の残骸を突き破り飛び出してくる、漆黒の槍。
 炎に燃える無数の刃が、巨体に叩きつけられて白い躯体を焦がした。

「La、La、Lalala、La―――――ッ!?」

 再開されそうになる演奏を、黒い炎の波が押し返す。
 それが噴き出してくるのは道路に開いた大穴。
 下水道に繋がっているだろうそこから、歩み出してくるのは竜の魔女。

 憎悪の炎に焼かれた灰のような長髪が、黒い熱風で揺れる。
 余分な鎧を捨て、晒すのはまるでドレスのような姿。
 首に巻いた鎖から擦過音を鳴らしながら、邪悪に笑うそれは現れた。

「―――ええ、確かに受け取ったわ。アヴェンジャー。
 お生憎様、希望とかそういうのに興味はないのですけど……」

 しゃらん、と。涼やかな音を立てて、漆黒の刃を抜刀する。
 続けて開かれる、竜の魔女の旗。
 火の粉の混じる熱風に揺れ、彼女の旗に描かれた紋章の竜が躍った。

 そうして構えた彼女が見据える、巨大なファントムとアナザーウィザード。
 憎悪に塗れる絶望に堕ちた怪人ども。

 そんな連中を前に、竜の魔女は己の心を加速させる。
 いつぞやは白いのに完全無欠に敗北した。
 彼女は望んだ彼女になれないままに、灰となって消え去ることになった。

「―――絶望なんて余計に知ったことじゃないのよ。
 私はジャンヌ・ダルク・オルタナティブ(とは違うもの)
 頭のイカれた聖女様よりは真っ当な、復讐者(アヴェンジャー)のサーヴァントなのだから!」

 彼女が名乗るその名こそ、彼女自身の祈りの結晶。
 自分は他の誰でもなく、自分は自分でありたいという願い。
 そんな誇らしき名を高らかに叫び、彼女は全身から憎悪の炎を漲らせた。
 
 
 

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