ハーメルン
疾きこと風の如く
第六話 誘い

 ある日の昼下がり。いつも通りに、世と人の為に(ヴィラン)を殲滅していた実弥だったが――

(やらかしたな……。これから、どうすっかねェ……)

 現在進行形でよろしくない状況に陥っていた。ビルの屋上から屋上へと飛び移り、足音ひとつ立てることなく疾駆しつつも呑気なことを考えている彼だが、冗談を抜きにしてそういう状況下にある。普段、(ヴィラン)を屠る際に深く被っているはずの黒いパーカーのフードを、被り直すことなく駆けているのがその証拠である。

 そんな彼の背中を追いかける者が2人。

「ちょっ、少年!待ちなさい、少年!なんという速さなんだ!」

「すみません……!さっきから不死川を視ちゃいるんですが、''()()''()()()()()()()らしく!」

「ええっ!?そりゃマジなのかい!?」

「マジですよ……。こんな時に嘘()く方が非合理的でしょう!」

 片方は、アメリカの国旗さながらの青を基調とした三原色の薄手のスーツを纏った筋骨隆々の男。V字に跳ね上がった金色の前髪と、キラリと光る白い歯が特徴的だ。
 そして、もう片方は真っ黒の長袖と長ズボンを着用した男。その首に巻きつけた凄まじく長い布のようなものを手にし、自分達との距離をみるみる突き離していく実弥を追う彼は、自身の目線を悟られないようにする為の金色のゴーグルをかけ、その下の目からは紅い眼光を放っていた。

 前者は、この日本に蔓延(はびこ)るヒーローの中で最も平和に貢献し、人々から平和の象徴として讃えられるNo.1ヒーロー、オールマイト。

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