ルビウス・ハグリッド:1
僕が彼を訪ねたのは、クリスマスが近づいて雪が降り始める頃だった。
彼は城の外。禁じられた森と呼ばれる場所の近くに建てられた小屋に、犬と共に暮らしている。森は校則で入る事が禁止されているのもあって、わざわざ彼を訪れる人は少ない。
だが僕には、どうしても彼と話す必要があった。
それはここ数日のポッター、ウィーズリー、そしてグレンジャーらの図書室での調べ物に関することだ。
「ニコラス・フラメルって誰だかわかりますか?」
それを聞いた時は驚いた。顔は平静を取り持っていたが、頭の中では脳みそがフル回転していた。
ニコラス・フラメルは、現在ホグワーツが守っている『賢者の石』の製作者だ。魔法界では錬金術師として有名で、ダンブルドアとは友人でもある。
授業で取り扱う事もあるし、本の中にも載る事もある。だがどこで知ったにしろ、名前だけを知るというのはまずない。考えられるのは、誰が漏らしたのを聞いた。とか。
例えば、『石』について知っている者が。
まさかと思い誰から聞いたのかを訊くと、ハグリッドだとウィーズリーが言った。グレンジャーとポッターが取り繕うようにそれを誤魔化そうとしたので、彼らもその名前が何か『見つかったらまずい物』に繋がっているのは理解しているらしい。
とりあえず適当に『20世紀の偉大な魔法使い』という事典を貸しておいた。あれにはフラメルは載っていないが時間稼ぎにはなるだろう。警戒するなら、グレンジャーに以前貸し出した『錬金術の礎と発展の楔』にフラメルと『石』の事が詳細に書かれていることだ。
本音を言えば本を回収して彼らから遠ざけたいが、変に意識されて確認されるのは最悪だ。本当に時間稼ぎにしかならない。
とにかくハグリッドがどこまで『石』とその護りについて、あの3人に話したかを確認する必要がある。まさか1から10まで全部を話したわけでは無いだろうが、彼はふと口が滑る男だ。
夜になり図書室を閉めると、彼の小屋を訪問する。大きな扉を数度叩くと、見上げるような毛むくじゃらの男が顔を見せた。
ルビウス・ハグリッド。
ホグワーツの森の番人。様々な生き物を愛する男だ。これは知られていないが、ホグワーツを退学になったところをダンブルドアに拾われている。
「やあ、ハグリッド。久しぶりだね。中に入ってもいいかな?」
「スコープさん。ささ、どうぞ中へ。狭っ苦しいですが」
ハグリッドは机の上の物を乱暴に退ける。椅子に座ると黒い犬が足元に寄ってきた。
「やあ、ファング。お邪魔してるよ」
「急に来るもんでなんも用意しておらんですが」
ハグリッドはお茶とロックケーキを出してくれた。ケーキは恐ろしく固く、お茶に浸して食べた。
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