ハーメルン
学園お抱え装蹄師の日常 
18:鉄のウマ娘のつくりかた(中)


「全く貴様という奴は…大人物のようにも、小物のようにも見えて全く正体が掴めんやつだ…」

 初対面時こそ派手に説教をぶちかましたものの、公の場では油断して軽率な行動をとることもあり、次に会えば机で眠り込んで転がり落ちる。
 そして今は頬まで煤けてやつれたボロボロのなりで、花に手を合わせている。

「大人物ってのがそもそも過大評価だな。お前さんが言ってくれるほど出来た大人じゃねえよ」

 男はそういって力なく笑う。
 この間お嬢ちゃん扱いして大見得を切った手前、男のささやかなプライドが邪魔しなくもなかったが、今現在上手くいっていないことを取り繕う気にもならないほどには憔悴していた。

「…苦労してるようだな。イクノディクタスの件か」

「あぁ。アイデアまではいいんだが、形にして使えるようにするにはなかなかな…」

 これまで何度も妥協が頭をよぎっていた。
 例えば蹄鉄じゃなくソールで同じ機能を持たせる方向にすることで、男がラクになる道もないではなかった。

「なんか、これ乗り越えないと負けた気がするからな…もう少し粘ってみるわ」

「ふん…きちんとサルビアに水をやることを忘れるなよ」

 エアグルーヴは踵を返し、良い姿勢で歩み去っていく。
 尻尾だけが、いつもの優雅なゆったりとした振りでなく、落ち着かなそうにせわしなく揺れていた。




 

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